皆さんは『サイコパス』という言葉を聞いたことがありますか?
良心がなく、平気で嘘をつき、凶悪な犯罪を犯す・・
そんなイメージがついているかもしれませんね。
サイコパスの特長とは?
ハーバード大学のマーサ・スタウト氏はサイコパスの特長をこう表現します。
「良心が欠如している人たちである」
主な特徴をいくつか挙げると
- 慢性的に平然と嘘をつく。病的な嘘つき。虚言癖。
- 異常なまでに良心が欠如している。
- 他者に共感性を示さず、冷淡である。
- 自分の行動に責任を持たず、他者に責任転嫁をする。
- 衝動的で自分の行動を抑制することができない。
- 幼少期からの異常行動、青年期の非行。
- 他人を利用し、寄生的な生活をする。
- 犯罪面での多才さ。犯罪の多種方向性。
などが挙げられます。
猟奇的な犯罪を犯すサイコパスが話題になることが多いためか、サイコパス=猟奇的犯罪者のイメージが強いかもしれませんね。
しかしサイコパスの特長は様々な様態で表れます。また、その数は人口の1%くらいだとされています。
あなたの周りにもいませんか?平然と嘘をつき、できもしないことをできると言って自分の行動にまったく責任を持てない人が。
そういう人はサイコパス的な素質があるのかもしれません。サイコパスとは身近な存在なのです。
サイコパスを更生させることはできるのか?
この稿の本題です。サイコパスは必ずしも犯罪を犯すものではありませんが、実際に犯罪で捕まるサイコパスもいます。
またサイコパスではなくても犯罪で捕まる人もいます。
カナダの心理学者がサイコパスの治療効果を検証するある研究が行われました。その結果が興味深かったので今回はそれを紹介したいと思います。
対象はカナダの刑務所病院に収監されていた強姦犯たち。
彼らにグループを作らせ、治療共同体と呼ばれる治療グループが実施されました。
このグループに参加した犯罪者を出所10年にわたって追跡し、その後の効果が検証されました。
治療共同体とは、仲間たちで集団生活を送らせ、生活のあらゆる面で各々の問題点が改善するように取り組みます。先輩のメンバーが規範となって後輩を指導し、上下関係をしっかりと守らせます。
グループの中でポジティブな雰囲気を育み、治療に集団で取り組むことが更生に役立つと評価されているプログラムです。
グループセッションでは互いに問題点を話し合ったりして自分のことを省みる機会をつくります。
驚くべき治療結果が・・
この研究結果では非サイコパスは治療を受けた後の再犯率が受けていない群より低くなっており、プログラムは成功でした。
しかし、サイコパスは治療を受けた群の方が、受けていない群より明らかに再犯率が高かったのです。
治療を受けたサイコパスの再犯率→77パーセント
受けていないサイコパスの再犯率→55パーセント
なぜこのような結果になったのでしょうか?
治療を受けたサイコパスは、他人の心を操る方法を学習して犯罪に悪用した
非サイコパスの犯罪者は他者との共感性や社会的スキルを学習し、犯罪を抑制できるようになりました。
しかし、サイコパスは他人の心を理解することで、学んだことを悪用できるようになってしまったと考えられます。
このように治療の結果が逆効果になってしまったのは、プログラムがサイコパス用に組まれたものではないからだとされています。しかし、サイコパスの再犯を防ぐことは極めて難しいということが明らかになりました。
現在、サイコパスにどのような更生プログラムを課すべきかは研究されており、いずれ有効な対策が確立するかもしれません。
しかし、サイコパスには常人の理解が簡単に及ばない存在だということは認識しておいた方がいいでしょう。
一般的に犯罪者に治療的なプログラムを施すには治療者との信頼関係がカギになると言われています。しかしサイコパスにはそもそも他者に共感する能力が生まれつき欠如しているので、信頼関係を駆使して行動を改善するのがそもそも無理なのです。
また、罰を与えることで行動を矯正することも難しいとされています。普通の人は子供の時に両親や教師から叱られたら、嫌な思いをして行動を改めようと思います。
しかしサイコパスには不快感を感じる脳の機能が障害されていることがわかっています。だから人から怒られたところでサイコパスは何も感じません。こうして子供の時から問題行動が多発するきっかけになるのです。
断わっておきますが、すべてのサイコパスが犯罪者になるわけではなく、普通に生活しているサイコパスもたくさんいます。またサイコパスにも程度があります。
もし身の回りにサイコパスがいたら
サイコパスを見分けることは容易ではありません。それに他人を簡単にサイコパスと決めつけるのは危険です。ですが、あなたの身の回りにサイコパスのような人がいたら、対処法は『とにかく関わらないこと』これに尽きるのです。
著者 原田隆之 『サイコパスの真実』より引用
①むやみに近寄らない
②表面的な言葉を鵜吞みにしない
③会う必要があるときは、一人ではなく複数で会うようにする
④自分の個人的なことを話さない
⑤本人の経歴等については、客観的証拠を基に判断する
⑥組織や企業では、重要な意思決定ができるポジションには就かせず、個人情報やセキュリティを扱う部署に配置しない
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