日本人は集団主義?それとも利己主義?

心理学
結婚滅亡 「オワ婚時代」のしあわせのカタチとは? [ 荒川和久 ]価格:1,650円
(2020/1/7 19:01時点)
感想(0件)

年末年始に芸能人の結婚離婚がニュースでよく流れました。

最近は1回2回の離婚は別に珍しくなくなってきましたが『結婚滅亡』という本を読むともともと日本人は昔から離婚が多かったみたいですね。

少子化で子供が少ないとよく言われますが、子供が少ないのは夫婦が出産しないからではありません。

結婚できない、あるいはしない男性女性が増えているのです。結婚して持つ子供の数はここ数十年であまり変化がありません。

特に年収が300万円代の男性とかが悲惨です。結婚したくてもできない層です。逆に女性は収入が増えるほど結婚しない傾向にあるそうです。

また、江戸時代は女性から夫に対して離婚を突き付けることも多かったのだとか。

夫が離婚する妻に対して渡す書類が三行半というやつで、男性が一方的に妻を離縁する時に使っていたような印象があるかもしれません。ですが妻から夫に対して三行半を寄越せと要求した事例も多かったそうです。

三行半は離婚を証明するもので、これを夫から受けとることで妻は再婚することができたのです。

江戸時代以前の日本も男性の立場が一方的に強く女性が弱かったわけではなかったみたいですね。

日本人は集団主義で流されやすいのか?

記事のタイトルと関係のない結婚離婚の話を続けてしまいましたが、『結婚滅亡』では日本人の価値観について興味深い分析がありました。

日本人は集団主義で、自分がないとか、流されやすいとか、同調圧力が強いとか言われますが、それは本当でしょうか?

2018年に国立青少年教育振興機構が行ったある調査があります。

調査では日本、中国、韓国、アメリカの高校生に「友人と合わせていないと心配になるかどうか」という質問が行われました。

この回答の結果を見てみると、友人と合わせていないと不安になり、周りの空気を読んで周囲に合わせる傾向が最も高かったのはアメリカの高校生だったのです。

他の社会心理学者が行った実験の結果と合わせて『結婚滅亡』の著者の荒川和久氏は、日本人も空気を読んで行動することはあるが、それは周囲に合わせておいた方が得だからという損得勘定から来るものではないかと分析しています。

日本人は集団主義ではないなら利己主義なのか?

ここまで紹介すると、では日本人は他者のことを気にかけない利己的な国民性ではないのか?と受け取られてしまうかもしれません。

『結婚滅亡』ではもう少し踏み込んで日本人の価値観について考察されていますがここでは触れません。

私が以前読んだ本で、日本人の気質について別の視点から解説されている本がありますので紹介します。

本当に日本人は流されやすいのか (角川新書) [ 施 光恒 ]価格:902円
(2020/1/7 22:10時点)
感想(0件)

この本では日本の教育に注目し、他国にはない特徴を解説しています。日本の教育に見られる独特な傾向とはなんでしょうか?

他者の気持ちを想像させる子育て

例えばお母さんが料理を作りましたが、嫌いな野菜を子供が食べなかったとします。その時、欧米諸国では子供に対して「ちゃんと食べなさい」と注意します。これは親の権威を使って子供を教育しようとする子育てのスタイルです。

対して日本では時として別の言葉を子供にかけます。

「せっかく作ったのに食べてくれないとお母さん悲しいな」

「農家さんが大事に育てた野菜なのよ」

などと言ったりします。こうした言葉かけで子供に他者の気持ちを想像させる機会を与えます。

教育の専門家はこのようなしつけは他国ではあまり見られないとして「周囲との関係の中で、他者の気持ちを想像し、自分が集団の中でどう振る舞うか」を考えさせる教育スタイルだと分析しています。

学校では子供を班分けして掃除を分担させたり、道徳の授業では状況や人の気持ちを読み取り、周囲との関係を考えさせる教材が使われたりします。

“また、塘利枝子らの日英の教科書の比較分析も類似の知見を導いている。日本では、自らの要求や行動に対立するような見解や出来事が生じた場合、他者の気持ちや状況をうまく読み取り、自分の従来のものの見方に固執せず、事態や周囲の環境に適合するように自分のものの見方を能動的かつ柔軟に変化させ、周囲と折り合いをつけるための新たな意味づけをするような主体的・積極的行為を、行為の規範的モデルとして設定する傾向が強い。出典:”本当に日本人は流されやすいのか (角川新書)”(施 光恒 著)

実際、先に紹介した青少年教育振興機構の調査でも、日本の高校生は他人からどう見られるかを意識する傾向が強いと分析されています。

まとめ

日本人が集団主義的かと言えば、単純にそうとは言い切れません。周りの空気を読んで周囲に合わせなければならないという観念は他国でも強いです。しかし、周りの気持ちを汲み取って周囲と調和して生活しようという習慣は家庭での子育てや学校教育で育まれています。

デイヴィッド・リースマンというアメリカの社会学者は、個人が周囲に流されず自分の価値観で判断できるようになるためには、その人の属する共同体の価値観をしっかり身に付けることが必要だという趣旨のことを述べています。

自分をしっかりと持って周囲に流されずに生きるためには、自分が所属する共同体の価値観を自分の中に持たなければいけないのです。自分の頭で考えた価値観だけで判断しようとしても人は自信を持てず、逆に周囲に流されるだけに終わってしまいます。

自分を持つことが大事だと言われますが、『自分』を確立するのは大変なことなのです。

コメント

  1. […] 日本人は集団主義?それとも利己主義? Share on Facebook Share Share on TwitterTweet Share on Pinterest Share Share on LinkedIn Share Share on Digg Share 0 メディア文化都構想 « 怪しげな健康情報は人間関係も壊します […]

タイトルとURLをコピーしました