豪雨で被災した特別養護老人ホームについての詳細を調べてみました

介護

みなさんこんにちは。いつもありがとうございます。

昨年7月、球磨川流域で大規模な洪水被害が発生し、これにより特別養護老人ホームに入居していた利用者ら14名の方が命を落とす痛ましい事故となりました。

厚生労働省の資料から当時の状況を改めて調べてみましたのでここに記しておきたいと思います。

被害の概況とタイムライン

千寿園は球磨村における唯一の特別養護老人ホームでした。

2階建てですが利用者の居室は全て1階です。2階にはヘルパーステーションと利用者家族用の部屋がありますがエレベーターはありませんでした。

同法人が運営する小規模多機能型居宅介護事業所と地域密着型特別養護老人ホームが併設されています。

2020年7月3日17時:降雨により地域に『避難準備・高齢者等避難開始』が発令されます。この時、小規模多機能型居宅介護の利用者と職員は土砂災害を警戒し、地域密着型特別養護老人ホームに避難を開始しています。

同日22時半頃:地域に避難勧告が発令されます。しかし先だって発表された16時45分時点での気象庁の降雨予測では、24時間の降雨予測は多いところで200mmとされており、大規模洪水被害は予測できませんでした。そのため職員の増員等の対応は行われていません。

翌4日2時半頃:球磨川洪水予報が「氾濫注意」となります。

4日3時半頃:避難指示発令。河川は1時間あまりで「氾濫注意」→「氾濫警戒」→「氾濫危険」と状況が著しく悪化。しかし、夜間で豪雨の中職員の参集には危険が伴い職員の増員はできず。同園はエリアメールで河川の状況が危険であるとの情報を入手。入所者を起床させ、談話室に集めました。

4日5時半頃:職員の増員はできないままです。この時点でも洪水災害より土砂災害を警戒した対応が取られていました。そのためなるべく山側から離れた別館の地域密着型特別養護老人ホームに入所者を移動させるなどの対応をとっています。

4日7時頃:施設内への浸水を確認。その場の判断で入所者を2階に移動させる垂直避難を開始。避難行動には近くから避難支援協力者ら(20名)が加わり53名の利用者を避難させた。しかしながら階段を用いての避難は時間がかかり、結果的に17名が取り残され、14名が犠牲となりました。

事前の避難計画の策定と避難訓練について

同園は避難計画を策定し、球磨村に提出しています。その計画には土砂災害を警戒した要素が多く、洪水被害にはあまり触れられていないものの、球磨村当局からのアドバイスはこれと言ってなかったとのこと。

同園は年2回の避難訓練を実施しており、火災発生想定や土砂災害発生想定の訓練を実施しており、その際は避難支援協力者も参加しています。

同園と地域との協力体制は日頃から構築されていたと評されています。

本件についての課題

聞き取り調査によると、同地域ではこれまで浸水被害が発生したことはなく、施設は土砂災害の危険を重視していたとのことです。結果的には洪水による被害が発生してしまったため、この見込みは不十分であったと言えるのかもしれません。

しかし避難計画の提出の際、球磨村の福祉部局と防災部局は内容を確認しながらも見直し等の支援までは行っていない事から、この点について施設の落ち度を責めるのはいささか酷であると感じます。

全体を見ての感想

発災直後、多くの入居者が亡くなるといった痛ましい報せに接し「適切に避難ができていれば多くの人の命が救えたのではないか」といった声が聞かれました。

ですが、降雨量を今一度確認すると、事前の降雨予測は24時間200mmであるところ、12時間439mmの雨量となっています。

事前情報を遥かに上回る雨量に対し、夜間帯で限られた人手でどこまでの対応が可能だったかというと難しいところがあるでしょう。

事前の被害想定に不備があったとしたら自治体の防災担当者にだって責任はあると言えるのではないでしょうか?

改めて情報を確認した上での私見を述べますが、施設対応の不備を指摘するのは少し酷ではないかと思います。

とはいえ今回の件では教訓として得るところもあるでしょうから、今後の被害を防ぐため役立てて欲しいところです。


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