いつもありがとうございます。介護の現場では、認知症で興奮の強い方などに、医療機関の受診が提案されることがあります。ご家族にとっても悩みどころですが、ご本人のために選択肢に入れていただければと思います。
副作用があるから服薬はダメ?
認知症と言っても症状の出方や進み方は様々です。もともとの性格や育った環境も違いますし、認知症にも種類があります。
認知症のタイプによっては、症状の進行を遅らせる薬が認められている場合もありますが、全ての認知症に有効なわけではありません。
また、認知症の症状によって、怒りやすくなったり、不安が強く出る、妄想が表れたり、幻覚に悩まれる方もいらっしゃいます。そのような場合、医療機関に相談すれば、それらの症状に対する向精神薬が服用されることもあります。
家庭で介護保険サービスを使いながら家族が主になって介護されている場合、認知症の問題行動によって介護がとても難しくなる場合もあります。医師と相談して対応する薬を出して頂くと、状況が改善する可能性があります。
施設で介護を受けられている場合でも、認知症による行動障害が酷いと、施設での対応が難しくなります。職員に噛みついたり、蹴ったりする方もおられます。また、他の利用者さんに手を出すようにもなると、かなり対応は難しいです。そのような時、ご家族に受診の提案がある場合もあります。
もちろんどのような医療を受けるかは、ご本人には判断が難しいでしょうし、ご家族の意向次第ということになるでしょう。ご家族が悩まれる場合も多いかと思います。
しかし、ご家族の中には薬に対する忌避感がとても強いということもあります。
薬に対するイメージが悪いのです。
中には、向精神薬を飲むとそれまでできていたことがまったくできなくなり、寝たきりになってしまうと思っている方もいるかもしれません。しかし、過剰に鎮静させるような量の服薬は、虐待になるのでまずありません。
また、副作用が心配だと言う家族さんもいらっしゃいます。副作用に関しては、薬ですからあります。
ふらつきなどが出ることもありますし、唾液の分泌が少なくなり、嚥下が難しくなることもあります。筋肉のこわばりや、逆に落ち着かなくなるなどの症状もあり得ます。
そうした副作用を心配する気持ちも、当然のことでしょう。自分で介護をしていて、問題行動があって大変だけど副作用が心配だから薬を飲ませたくないというのも、家族の意見として尊重されます。
しかし、それでも敢えて言いますが、副作用があるのを承知で、薬を使うというのも当然1つの手段です。
副作用があるというのは承知された上で、医療の現場で薬が出されているのです。副作用があることは、薬を全否定する理由には当然なりません。
副作用はあるかもしれないが、それでも薬を使った方がいいのではないかと思われるケースはあります。
実際、薬を使って状態が落ち着かれ、ご本人が楽そうにされているケースだって見てきました。薬はメリットとデメリットを天秤にかけて判断するものです。
デメリットにしか注目しないのはおかしい
薬を飲むメリットは、症状が改善する可能性があることです。飲むデメリットは、薬が効きすぎてしまうことや、副作用が出る可能性があることです。
中には、薬の提案をするとデメリットのことばかり上げてくる家族や、介護職の方もいらっしゃいます。介護職の方でそのような反応をする方は、少し理解に苦しみます。
「安易に薬を勧めないでください」と言う方もいらっしゃいますが、安易に勧めることはあまりないかと思います。
また、薬を飲まないことのデメリットも考えておくべきでしょう。
薬を飲まないデメリットとは、問題行動やそのもととなる症状が放置されることで、本人が苦しい想いをしたり、家族の介護も難しくなってしまうことです。ご本人のみならず、家族の生活の質の低下ともなりかねません。
薬を使ってデメリットが発生した時のことだけ列挙して薬を否定するというのは、明らかにバランスを欠いていると思います。
また、介護職の中には「高齢者は体の機能が低下しているので、重い副作用が出ることがある」という指摘もありました。
高齢者は肝臓や腎臓の機能が低下しているので、薬そのものの作用が強く出たり、副作用が出やすいというのは確かにそうです。ですが、処方する段階で年齢が考慮されて、高齢の方は少なめの量から処方されるので、あまりそれを言うのもどうかと思います。
また、薬を処方したからといって、いつまでもその薬を飲み続けなければいけないわけではないでしょう。副作用があったら量を減らしたり薬の種類を変えることだってありますので、副作用の問題はそればかりに拘る意味が乏しいのではないかと思います。
また、施設などで介護職に危害を加えるまで激しい問題行動がある場合は、やはり何らかの対応を取らなければならないのが現実ではないでしょうか。もちろん環境や対応に配慮して、薬以外の対応方法は考えられています。そこで選択肢から薬を完全に否定するのは、やはり行き過ぎではないかと思います。
薬は介護をよりよくしていくために検討する、1つのツールなのではないでしょうか。あまり副作用だけに注目するのは得策ではないように思います。
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