いつもありがとうございます。某病院が看護師のボーナスカットを表明し、問題になりました。結局、ボーナスは支給されることになったようですが、労働環境が整備されないと医療体制を維持するのは難しくなってきます。看護師は奉仕の仕事だからと報酬を求めるなという乱暴な意見がありましたので、それについて書かせて頂きます。
報酬を減らされるとモチベーションは維持できない
今はコロナの対応で医療機関の収益も大変苦しいものとなっているようです。
皆さん不急の通院は控えられますし、予定されていた手術を先延ばしするということも起きているようです。医療機関としても、万が一院内でコロナが発生したら風評被害など大変なことになりかねません。
感染拡大抑止のため、通常の業務でも必要なマスク、アルコール、防護服なども不足しがちです。マスクなどはだいぶ供給が安定してきましたが、以前より高い。
リスクをとってコロナの患者を受け入れたり、他の病院から紹介されて高度な医療を提供していた病院で院内感染が起きて、不見識な小説家コメンテーターから「病院から感染を拡げないで」などと侮辱を受けた病院もありました。
今は医療従事者全体に大変なストレスがかかっています。収益も悪化するので、まったく報われません。
ボーナスを減額する医療機関があいつぐなか、ボーナスの全額カットを表明した病院についての話題が、大きな衝撃でした。もっともこの病院はコロナ云々以前に経営体制そのものに問題があったような気がしないでもないですが。
ここで言及されている手取り14万円というのは、病院の寮費を引いた額とのことです(寮費は約4万〜5万)。
しかし現場の人間が待遇に不満を訴え、大量離職が発生してしまうような状況では、新しく人を募集しても人手確保は今後も難しいでしょう。
そしてボーナス支給の方向に転換したようですが、これで信頼関係の回復につながるかどうか。
コロナの感染拡大はそうそう収束するような状況とも思えませんので、医療体制の維持が喫緊の課題です。
感染のリスクが高い最前線の医療機関で、給料も減らされ、おまけに医療従事者本人や家族が差別を受けることもある。本格的に感染が増えて来る前に、医療体制が崩壊してしまっては、救える命も救えない。また医療機関はコロナ以外の疾病にも対応をしていることを決して忘れてはいけません。
医療従事者に対しては、確かに感謝も必要でしょう。しかし、上の画像にもあるように、精神論根性論だけでは、現場が疲弊するばかりです。
感染防護の為の医療資材も必要です。それらがあっても感染を完全に防げる保証もなく、現場の疲弊を放置していると院内感染のリスクも高くなって来る事にも注意が必要です。
そして医療機関だって収益が必要です。設備や人にもしっかりお金を使っていかなければなりません。それが疎かになれば、不利益を被るのは医療サービスの受益者である国民全体でもあります。収益の確保、医療従事者の待遇の改善はしっかりと取り組まなければならない課題です。
犠牲なき献身こそ真の奉仕である
そして世の中には、ごく一部でしょうが残念なご意見もあります。
看護師は奉仕の職業であるから待遇に文句を言ってはいけないかのようなツイートがありました。
もっともこのご意見を述べた方は、他の方からの批判もあり、ご意見を撤回されています。なので発言主についてとやかく述べるのは、私もなるべく控えたいと思います。
しかし個人的意見として、看護師が奉仕の仕事をしているからといって、待遇に不平不満を述べてはいけないというのは、まったく不当であると指摘しておかなければならないでしょう。
そもそも看護師や医療従事者全体、また介護職や保育の関係者はよく奉仕の精神を求められているきらいがありますが、仕事としてやっているのですから、対価を求めるのはごく当然のことです。
看護師だって自分の生活があります。養わなければならない家族だっています。
看護師が働けるのは、労働の対価を受け取って生活が安定しているからです。それがなければ誰も仕事なんかできません。介護も保育も同じことが言えます。
ナイチンゲールは犠牲なき献身こそが真の奉仕であるという言葉を残しています。
それは誰かが犠牲を払う奉仕など、長続きするものではないからです。
医療が看護師の犠牲のもと無理を続けていたら、看護師が医療現場からひとり、またひとりと去っていくだけです。そうして医療が成り立たなくなれば、患者のためにもならない。
患者が医療従事者に対価を払うのを拒み、それを奉仕という言葉で正当化するのは欺瞞です。それでは患者が医療従事者に犠牲を強いて、医療サービスにタダ乗りする事になりませんか。
お金が全てではありませんが、お金という形で仕事に対する報酬を払うのがごく当たり前の行為です。医療サービス提供しているのは人間です。忘れてはなりません。
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