緩和ケアのよくある3つの誤解

ガンの治療を断った人がどうなるか?という動画が投稿される


YouTubeで「アシタノワダイ」というチャンネルがガンの治療についての動画を投稿していました。

専門家からすれば「よくある誤解が含まれる」ということで、解説動画も投稿されています。

アシタノワダイ「ガンの治療を『断った人』は、その後どうなるのか」は本当?緩和ケア・がん治療・終末期医療の専門家が真実を伝えます

元の動画には本当によくある誤解がふんだんにありましたので、たくさんのツッコミポイントが紹介されていますね。

緩和ケアは名前は聞いたことがあっても「治療をあきらめモルヒネを打って無理に痛みを抑え込む」というイメージが先行しているのではないでしょうか?

医療関係者や介護関係者でも緩和ケアについてよくわかっていない人もいますので、よくある誤解ポイントを3つ、以下に紹介していこうと思います。さらに詳しく知りたい人は上の動画をよくご覧になってくださいね。

よくある誤解1:ガン治療と緩和ケアは二者択一である


これが一番よくある誤解です。アシタノワダイの動画では、患者が医師からガンを宣告されて、治療を受けるか、緩和ケアを受けるか選ぶシーンが最初の方にあります。

実際は緩和ケアとはガンになっても質の高い生活を送るために、ガンと診断された時から治療と並行して受けることができます。

緩和ケアとは単に肉体の痛みをとるだけのものではありません。精神的苦痛や経済的苦痛を和らげることも含みます。

抗ガン剤などの治療を受けながら、様々な苦痛を和らげるために緩和的な医療を受けられます。治療をするにしろしないにしろ、生活の質を高めるために受けるのが緩和ケアです。

また、抗ガン剤治療を受けることで苦痛が楽になることもあります。昔のように副作用の強い薬を使って苦しむことはなくなったとは言いませんがずいぶん少なくなりました。

大腸ガンの患者を調査したある研究では、抗ガン剤を使って治療したグループとそうでないグループを比較しました。

結果は抗ガン剤を使ったグループの方が生存日数を延ばせただけではなく、QOLも高かったという結果が得られました。ガンの種類や使う抗ガン剤にもよりますが、治らないにしても治療を受けた方が苦痛が少なくなる場合もあります。

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よくある誤解2:緩和ケアでは主にモルヒネを使う


緩和ケアというとすぐにモルヒネを使う、というのもよくある誤解の一つです。

ガンの緩和ケアのガイドラインではいきなりモルヒネを使ったりしません。またガン患者さんも常に激しい痛みにさらされているわけではありません。個人差があります。

ガイドラインでは身体の痛みに対しては、まず非オピオイド鎮痛薬を使います。

オピオイドとは医療用麻薬のことです。

すぐに激しい痛みが生じるわけではないので、出てきた痛みに対してはロキソニンやボルタレン等の良く聞く名前の薬が使われます。弱い鎮痛効果しかありませんがこれでも十分対処可能な段階があるのです。

だんだん痛みが強くなってくると次に使われるのは弱オピオイドに分類される薬になります。コデインやトラマドールという薬です。

トラマドールは関節疾患などによる慢性の痛みにも使われる薬ですが、長期的に使うのは避けた方がいいという専門家もいます。緩和ケアとしては欧州ではよく使われている薬です。

弱オピオイドでも対応できなくなってきたときに初めて強オピオイドが使われます。強オピオイドに分類される薬は、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどです。緩和ケアに使われる薬にもいろいろ種類があるのです。

こうしてオピオイドを使い始めた場合でも、それまで使っていた鎮痛効果の弱い薬をやめてしまうということはありません。ガイドラインでは弱オピオイドまで使っても押さえきれなかった痛みを、弱オピオイドを使ったまま強オピオイドを追加することが推奨されています。

緩和ケアでは最終的にモルヒネを使うことは使うのですが、いきなりモルヒネを使うことはあり得ませんのでこの誤解は解いておきたいですね。

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よくある誤解3:モルヒネを使うと中毒になってしまう


モルヒネという薬について怖いという印象を持つのは仕方がないことですが、緩和ケアに用いる場合については中毒や依存症の心配はしなくていいと言ってもいいでしょう。

痛みのない人にモルヒネを与えると、脳内でモルヒネとオピオイド受容体が反応し、漫然と使っていると依存性が働きます。

しかし強い痛みを感じている人にモルヒネを投与すると、脳の神経系のバランスが取れて、身体的、精神的な依存が形成されないことが証明されています。

モルヒネで厄介なのはむしろ便秘、吐き気、眠気などの副作用の方です。

吐き気は多くの人に見られる副作用なので、吐き気止めと一緒に出されることが多いです。この吐き気もしばらく服用していると収まることが多いです。

モルヒネを使っていてもガンの進行で量を増やさないといけなくなることが多いのですが、これを「モルヒネに慣れてどんどん効かなくなってきた」と誤解されることが多いです。医師の処方に従って使用している限り耐性は気にしなくてもよいでしょう。

よい緩和ケアは寿命を延ばす

緩和ケア治療=麻薬の使用と思われているのでなかなかイメージが良くならないのですが、緩和ケアで苦痛を軽減した方が生存期間も延長するというデータもあります。

また緩和ケアを受けながら抗ガン剤治療をしたってかまいません。

寿命が延びたおかげで、ガンによって亡くなる人も増えました。

自分や身近な人がガンになった時のために、緩和ケアの正しい知識を身に付けておきましょう。

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