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医療や福祉の現場では、やむを得ない事情で患者さんや利用者さんの自由を制限することがあります。これが『身体拘束』です。
拘束にはベッドから落ちないようにベッド柵を4つ使ってベッドから降りられないようにすることを含みます。
この拘束、報道では非常にネガティブに扱われることが多いですね。確かに安易に拘束を行うのではなく、拘束せずに必要なケアを提供することができればそれに越したことは7ないと思うのですが。医療や介護現場を知らない人から安易な拘束が行われていると思われてしまったらちょっと心外です。
ちなみに私はケアマネですが、どちらかというと介護施設での拘束を見るより、医療機関での拘束を見ることが多いです。認知症の方が入院してきて、何も対策を取らないと点滴やチューブを抜いてしまうような場合というのが実際にあるので、ちゃんと必要なプロセスを踏んだ上で一部自由を制限している場合があります。この対策を行わないと医療機関での対応が困難になります。
拘束は患者さんのためにも必要という意見
拘束に対してネガティブな記事と、実際の医療従事者のコメントのツイートですね。楽をしたいから拘束したいわけではありません。興奮した状態で職員を殴ったり蹴ったりしてしまう方に対しては、拘束を検討せざるを得ません。
そして拘束は安易にできないので、するならするで手続きをしたり記録をとったりしないといけない。義務なので当然と言えば当然なのですが少なくとも楽をしたくて拘束しているわけではありません。
病院も介護施設もケアを提供する場所。しないにこしたことはなくても、相手に近付けなくては治療も看護も介護もすることはできません。
患者さんが自分で自分を傷つけてしまうことも十分考えられます。医療現場はそれほどシビアな環境です。
メディアなどで拘束があまりに責め立てられると、医療機関としては「それならもう患者さんを受け入れられませんよ?」となります。暴れてしまったり目が離せないような方をでは病院や介護施設以外で対応していくことができますか?現実的に厳しいと思いますけどね。
身体拘束には3つの原則があります。
厚生労働省は身体拘束にあたり3つの原則を設定しています。
1.切迫性があること:本人に対して差し迫った身体・生命の危険があり早急な対応が必要な時。
2.非代替性 :拘束以外に他に有効な手立てがない状態であること。拘束以外の手段を考えて、拘束するしかない場合。
3.一時性 :身体拘束は一時的な対応にとどめること。
を挙げています。
この条件が揃った場合、医療機関や施設と家族で話し合いの場を設けて同意を得なければなりません。また拘束を行った場合はその記録をちゃんと残しておかないといけません。このように手順を踏んで行わなければならないので、施設側も拘束などしなくて済むならその方が助かります。
しかし限られた人手の中で車椅子から無理に立ち上がろうとする方に対応しようとしたりすればかなり大変です。無理に立ち上がろうとしてケガをしてしまい、それでご家族も納得されるのならいいのですが、施設に対して責任を追及してくる場合も考えられます。なので車椅子にずり落ち防止ベルトをつけたりするのはもうやむを得ないと思います。
拘束を問題視する報道を見ると、患者さんや利用者さんがベルトで四肢を括りつけられているようなイメージばかり先行してしまいそうですが、実際に現場で行われているのは転倒防止のベッド柵4点使用とか、点滴やチューブを自分で抜かないようにミトンをはめるとか、車いすから立ち上がってケガをしてしまわないようにベルトをつけるとかが多いです。あまり拘束について偏ったイメージを煽らないで欲しいものです。
拘束を全否定する人は、ぜひ現場を経験して欲しいです
拘束を全否定する、というい人までは少ないでしょうが、病院は施設は安易な拘束ばっかりやってそうと報道を見て思ってしまう人はいそうです。
一部のジャーナリストが書いた記事を読むと拘束が非常に不当であることのような書かれ方がされています。中には拘束までしなくてもよかったケースで、拘束を行ってしまった例もあるかもしれません。
でも敢えて言わせてもらえば、拘束は患者さん本人、ケアを提供する側、また他のサービス利用者のためにも必要なことであると思います。3原則に従って行われる拘束は、非難されることではありません。
たまに「拘束ゼロ」をどうやって達成していくかという記事を読むことがあります。しかし、日常的に認知症や精神疾患の患者さんを受け入れている現場もあるので、目標が拘束の「ゼロ」であることはナンセンスであると思うのですが。
確かに拘束ゼロにしようと思えばできることはありますね。
身体拘束が必要な利用者さんを受け入れなければいいのですから。
その場合、在宅で受け入れるご家族が大変な想いをされるでしょうね。無理に拘束ゼロにしようとすればこういうことになります。
不必要な拘束をしないようにできることは、確かにまだまだあるかもしれません。ですが一般の方には拘束の悪い一面だけに注目しないようにしてほしいと思いますね。
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