『サービス担当者会議②』

介護

「では、退院の日にちもそろそろ決めていきたいのですが…」

相談員の梅本さんが切り出す。確かにいつまでも入院しているわけにもいかないし、黒川さん自身が入院という状況に戸惑っている。

息子さんも退院して自宅でと考えているのだし、在宅復帰のサービス調整の始まりだ。

「もう少しリハビリを続けて頂くとして、来週くらいには退院という形でお願いできれば」

来週か…。サービスの内容自体は決まっている。デイサービスも柏デイサービスを体験済みだし、これ以上他の事業所を紹介する必要はない。

契約や担当者会議の日程の調整がメインだがそれがクリアできるかどうか、だな。他にも自宅に戻ったはいいがまた転倒してしまったとか、不測の事態への備えを考えるべきか。

「来週の後半になると、仕事の調整が難しいんです」

息子さんは普段は農協の仕事をしている。それなりに出世もしていて、責任も重い。

「20日か21日でお願いできないでしょうか?20日だと午前は難しいですが」

「こちらはそれで構いません。ケアマネさんのご意見は?」

「…」

私はそこで考え込む。眉間にシワが寄っていたかもしれない。

−−−−

結局、21日の退院の方向で、それぞれが動くことになった。午後からの退院は難しいとの病院の都合もあった。

だいぶ回復してきたとはいえ、サービスを利用せずに1人にしておくのは危険だ。

22日から息子さんが忙しく、仕事を休めないのであれば、21日のお昼に自宅に戻って来て、午後から私と柏デイサービスの職員が訪問し、サービス担当者会議を開催する。

そしてケアプランの内容を確定し、デイサービスとの契約を結んで22日からデイサービスの利用を始める。これが現時点では最良だが、日程の縛りがキツい。

そもそも21日は私も…いやこれはなんとかしよう。柏デイサービスが契約と担当者会議のために時間が取れるか。

「黒川さんて前に体験来てくれたのは人だよね、あの人なら歓迎だよ!」

と、調子よく小阪主任は言っていたが…日程は大丈夫だろうか。

不安な気持ちを抑えながら、私は受話器を上げるのだった。

−−−−

「うーん、黒川さんて、前は社会参加目的で利用を考えてたじゃない?でも今は入浴目的だからさあ〜」

「はあ…」

小阪主任の言う意味がわからず、思わず気の抜けた返事をしてしまう。

利用目的が違うから、なんだと言うのか。

早い話が21日は人手が足りず、担当者会議への参加は無理ということだった。それならそうとさっさと言えばいい。

退院したばかりの黒川さんを受け入れるには、事前の状態確認が必要だというのが、小阪主任の言い分だ。

そして21日は相談員の藤野さんが休みで、担当者会議や状態確認のための時間が取れないと言い出す。藤野さんが休みなら小阪主任が来ればいいではないかと思うのだが…。

21日が無理だと、それからしばらくは息子さんも面談の時間が取れないと事情を説明はするのだが、小阪主任は何かと理由をつけてその日は無理だと言い張った。

「退院してすぐじゃなくって、しばらくしてからの方がいいんじゃないの?別な日に息子さんに休んでもらうとかさあ〜」

気軽に言ってくれる…。まあ確かに日にち固定で担当者会議への参加を打診するこちらも悪いのかもしれないが…

「わかりました…。日にちはもう少し調整できないか、一度相談してみることにします」

このままではラチがあかないな。やはり退院の日を先延ばしにするなど、調整するしかないのだろうか。いや、もう他に手がないか、少し頭を捻ってみることにしよう。

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