「好きな食べ物はむせない」は本当か

介護

食べることは楽しみ。

食事をとること、睡眠をとること、排泄をすること、は人間の三大欲求です。これができないと人間は生きていけないですから。

しかしこのどれもが加齢や病気が原因で障害されてしまうことがあります。介護も医療も相手がこの欲求を満たせて安心して生活できるように努めるのは職務上当然のことだと思います。

とくに食べることはみんな好きですよね。食べるのが嫌いだという人はほとんど見ません。しかし脳血管疾患などが原因で、食べる機能が低下してしまう人がいると何度も指摘してきました。

口から食べたいと思っていても、固形の物をそのまま食べさせてしまうと危険な例は介護現場ではザラです。

水分にはとろみをつける、そのままの物では食べにくい方には刻んで提供する。あんかけにして食べやすくする。ミキサーにかけた食事を提供する。そこまでしてダメなら中心静脈栄養や経管栄養という方法を取らざるを得なくなってしまいます。

相手の状態に合わない不適切な食事を提供すれば誤嚥性肺炎を起こしてしまったり、最悪の場合は窒息です。食べる機能が低下してしまっている場合は、唾液や胃からの逆流物でさえ気管に入って誤嚥性肺炎を起こしてしまいます。


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介護は相手の状態に合わせて、個別に対応を考える必要があります。食べる機能が衰えてきた方には相応のリハビリを提案したり、食事の形態を考えるのがプロの仕事です。

残念ながらその理解が乏しいのではないか?と思われる事例がありました。

引用されている画像を見ると

・食べるのが好きな利用者さん(食べるのが好きなのは当たり前)

・ソフト食での提案になっているけど、本人は焼きそばを食べたいと希望(ソフト食になっている時点で食べる機能は低下していると考えられます)

・ナースと相談して焼きそばをだしたら、むせながらも喜んで食べた。

とのことです。

なるほど、ソフト食では食べ応えを感じられず食事が楽しめていないのかもしれませんね。生活に楽しみを持ってもらうため、相手が満足できる食事について考えるのは重要だと思います。

しかしむせながら食べた、という時点でかなり危険な介護になってしまっていると私は判断します。

食べ物が気道に入りそうになると人はむせます(咳反射と言います)。そうすることで異物が気管に入らないようになっているのですが、むせが起きたら大丈夫なわけではなく、むせる食事をしてしまった時点で後になって誤嚥性肺炎を発症するリスクがあります。むせないで誤嚥(不顕性誤嚥)をしているケースだっていくらでもあるわけです。

食べたいという希望を考慮するのは重要なこと。ですが機会を限ったとしても本人の食べたいものを食べさせるのは違うのではないでしょうか。

誤嚥が危険であることを理解して、相手の状態を見て可能な範囲で何ができるのか考えるべきではないでしょうか。そこまで検討して焼きそばを食べさせていたのだとしたら申し訳ありませんが、誤嚥の危険を軽視するツイートは控えていただきたいものです。

好きなものはむせない、の俗説について

食べる機能が低下した人でも、好きなものを食べさせたらむせないという俗説があるようです。窒息の危険が少ないとも言われます。あるテレビ番組でこういう話が出たものですから、こういう理解をしている人がいるようです。

しかし本人に合わない食事形態で食事をさせることは、たとえむせなかったとしても不顕性誤嚥が起こりえる以上おすすめできません。そういうリスクを考慮した上で自宅で本人と家族の判断で食事を摂ることは止めませんが、介護施設でできるようなことではありませんね。

ALSという病気で呼吸する筋肉も食事をする筋肉も弱って胃ろうを造った肩がいました。まだ普通の食事を食べることができましたが、呼吸筋がほとんど機能しないほどに弱ってしまってからではもう遅いという判断で胃ろうの手術を受けられました。

体力低下で十分な食事を食べることはできませんが、胃ろうを使うことで最低限のカロリーは確保できます。

「食べたいけどいっぱいは食べられなくて・・」と訴えるその方に「好きなものを食べて食事を楽しまれたらよいと思います。胃ろうがあるからと言って食べてはいけないというわけではありませんし。好きなものを食べるのでしたら、少量であっても満足できると思いますよ」と主治医はアドバイスされました。

「好きなものを食べましょう」とはこういう場合ありだと思います。

本格的に食べる機能が低下したら、このアドバイスは通用しないでしょう。どうしても食べたいのであれば無理には止めませんが、リスクもありますので注意してくださいね、というスタンスで私も接すると思います。医師ではないのではっきりとは言えないことですが。

好きな物ならむせずに食べないか、という話は最初に引用した事例で食べたい焼きそばを食べた方がむせながら食べていたということから信憑性に乏しいと判断します。

食事を楽しんで欲しい、という想いは私も普段の仕事で持っています。その想いは否定しません。しかしリスクを十分理解しない介助はノーだと言っておきます。

家族で介護をしていて最近むせやすくなったと心配な方は介護保険で食べる機能に対するリハビリを受けられる場合がありますので、ケアマネさんにご相談ください。どんな食事なら無理なく食べられるのか、という提案をしてもらえる場合もあります。

また誤嚥性肺炎を予防するには普段から口の中を清潔にする必要があります。歯科医への通院が難しい方は訪問診療のサービスを受けれたりするのでこれもケアマネさんに相談するのが良いかと思います。

また、「まだ40代なのに歯が折れてしまった」というような方は普段からフッ素を使った歯磨き剤を使うのが良いのではないでしょうか。歯科医ではないので断定はできませんが、フッ素は虫歯予防に有効なので口のトラブルを減らせる可能性が高いです。高濃度フッ素配合の歯磨き剤がドラッグストアの店頭でも増えてきたなと思います。

むしろちゃんと歯磨きしていてもフッ素がないと効果がないと言われるくらいです。あと歯間ブラシ、デンタルフロスを使うとよりいいです。マウスウォッシュは効果が乏しいです。口の中の虫歯の原因菌はバイオフィルムという膜を作るので、歯磨きせずにマウスウォッシュを使っても殺菌ができません。

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感想(186件)

コンクールは歯磨きジェルでフッ素が高濃度に含まれています。歯磨きした後にはあまり口をゆすがなくても大丈夫です。ゆすぎ過ぎるとフッ素が流れてしまうので逆効果です。

他にドラッグストアで気軽に入手できるものは『シュミテクト デイリープラス』です。1450PPmのフッ素が含まれていて規制されている範囲で最も多い配合量です。

ちなみにコンクールのマウスウォッシュもあるようですが、こちらは使ったことがありません。とにかく歯磨き剤でのフッ素を重視しているのであまり注意がいかないですね。

私がしっかり歯磨きするのは夜だけなのですが、それでも虫歯はシュミテクトに切り替えてからほとんど治療が必要なくなりました。でもどんなに高濃度のフッ素を使っていても歯磨きの時間が短ければ効果が少ないと思いますので、最低でも3分は磨くことをお勧めします。

歯は一生ものなので皆さん大事にしてくださいね。

コメント

  1. […] […]

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