なぜリスクゼロを求めるのか

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新型ウイルスを食い止めるためとは言え、船で長期間足止めをくっている人がいて大変ですね。

日本でも新型肺炎での死者が出たそうなので不安にますます拍車がかかりそうです。死亡率はそれほど高くないので過剰に心配する必要はありませんが、新型のウイルスなので身構える気持ちはよくわかります。

ウイルスは確かに脅威なのですが、もっと大きな害があります。それは偏った情報によるパニックと、リスク評価の誤りです。

今回の客船内ではウイルスを含んだ飛沫が拡散している範囲内に多くの人が接触してしまいました。なので今のところr症状が表れていなかったとしても潜在的に感染している人がまだ船内に残っていてもおかしくありません。

ミヤネ屋で船内の男性への電話インタビューが生放送されていましたが、インタビューに答えた男性は「今の状況は仕方ない。薬も届いているしなんとかなっています。船員のみなさんもよくやってくださっている」と話していました。

閉じ込められていて、いつ感染するかわからない状況におかれるのは大変なことだと思いますので心配ですね。

一方、この状況に不満を漏らす方も当然ながらいらっしゃいます。

政府に手紙を出し、最終的には全員検査を実施して無菌であることを保証するようにとのことです。

菌とウイルスは別物ですのでその時点で間違っていると思いますが、無菌であることを徹底するのはナンセンスであると思います。

検査はどれだけ徹底しても「偽陰性」となることがあります。感染しているのに陰性と判定されてしまう場合があるということですね。検査は完璧ではありません。

感染者と接触した方についてはしばらく外界から隔離して、症状が出れば検査する、症状がなければ経過観察を経た後に船を降りて頂くという対応でよいのではないでしょうか。

Twitterで「検査が完璧ではないというなら、全員船を降りたらいいんじゃないか」と述べている人がいました。しかしこれだと不用意に感染を拡大させるリスクが高く、感染者が増えてしまい医療機関の対応能力を圧迫する結果になりかねません。

合理的に可能な範囲でリスクを減らしつつ対応する、完璧は求めないという対応が大事だと思います。

ゼロリスクの追求がなぜだめなのか?

リスクは無理に下げようとすると、リスクを下げるコストがメリットを上回る段階が出てきます。

100%のリスクを50%に下げるのはわりと簡単です。

ですが10%のリスクを5%に減らすのはよりコストがかかります。

1%のリスクを0.5に下げるのはもっと大変です。ここまでくるとやる意味があるのかというレベルになってきますね。

無理にリスクを下げようとするとコストがかかるだけでなく、別のリスクが高くなってしまう場合もありますね。

例えば野菜を栽培する時に使われる農薬の影響を過度に心配する人がいます。確かに農薬を使わなくて済むならそれがいいような気がしますよね。

でもかつて無農薬で栽培した野菜で作ったベビーフードから、健康に悪影響を及ぼすレベルの毒素が検出されたことがありました。

ナス科の野草にはアルカロイド系の毒を含むものがあります。普通は除草剤で排除するのですが、無農薬で育てていた畑ではどの毒草が排除されずベビーフードに紛れ込んでしまったのでした。農薬のリスクは限定的なのに、何としてでも「排除しようとして逆に毒物を接種してしまっては本末転倒ですね。

また、市販の点眼薬に使われている防腐剤が心配だからと塩化ナトリウムの入っていない塩というわけのわからない謎の物質を使って目薬を自作しましょうと言っていた人がいましたが、自作した目薬なんてすぐに雑菌が繁殖してしまいます。そちらの方がより危険ですね。

リスクは他のリスクと比較して評価する必要があります。

原発事故が起きた後、周辺地域の住民たちは避難を余儀なくされてしまったのですが、それとは別に東京や千葉などから避難してしまった家族もいます。

ですが放射線被曝のリスクは100mShvの量を一度に浴びてガンになる可能性がようやく0.5%増えるかどうかでしかありません。福島の他の地域ですら普通に生活してそこまでの線量を浴びることはないのに、東京からの避難を選んでしまうとはまったく非合理です。実際に避難した先で生活基盤を失い経済的に困窮している事例があります。

情報を正しく取捨選択しないと誤った判断をしてしまいます。

検査は万能ではない、について

今回の肺炎だけではないのですが、検査でも感染しているのに陰性と判定してしまうこともありますし、感染しているのに症状が出ない人もいます。

ミヤネ屋に出演していた岩田医師はこう述べていました。

「検査陰性でも感染していないという証明はできない。これはインフルエンザでも同じ。よく職場から検査を受けて感染していないことの証明をしてほしいと言われたという患者さんが来院されるが、医療機関としてはそう言われても困ってしまう。検査が陰性だからと言って感染していないという証明にはならないのだから」「症状が出ていない人にまで不要な検査を行うと、貴重な検査キットをむだ遣いしてしまう。」

とのことです。

いろいろ情報が錯綜していますが以下のことは言えると思います。

・検査を過信して感染していない証明に使おうというのは無理がある。偽陰性の可能性を否定できない。

・症状が出ていない、感染者と接触した可能性も確かでない人にまで検査を行うのは検査キットの無駄遣いとなりかねないし、そんな検査をどんどんやっていたら医療機関に過度な負担をかける。

・感染の拡大防止策は合理的に可能な範囲で行うこと。リスクゼロまで徹底するのは無理だし、やろうとすると弊害が出る。

今回の肺炎の拡大対策では不備もあるのでしょうが少なくない方が尽力されているものと思います。日夜努力されている方への感謝を忘れず、今後の経過を見守りたいと思います。

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