看取りに携わること

介護

先日、介護職と看取りについての記事https://yashirok.xsrv.jp/archives/260を書きましたが、看取りについての話題がまだTwitterで続いています。

もともと「介護職が看取りに主体的に振る舞えば介護職へのありがとうが増える。だからうちでは看取り研修を積極的に行っている」という趣旨の発言をある法人の代表が述べており、先日の記事は「看取りの主体はあくまでもご本人やご家族である」という点を中心に反論したものです。

法人の代表が看取りに力を入れて積極的に研修を行うのは結構なのですが、その後その人物の口から、利用者さんに提供するケアの質の観点からの発言が少ないように思います。

なんのために看取り研修を行うのか?看取り研修の目的がより良いケアの提供を行うことではなく、単に介護施設での看取り対応を増やすことだけなのであれば、私は違和感を感じます。その人物は「俺はマーケティングの話をしている」としており、「看取りで介護職のイメージアップを図ろうというのは、亡くなる利用者さんやご家族を利用しているだけではないか」と感じた気持ちがより強くなりました。ここでもなんだか人を利用している感じがします。

もちろん、経営者だったらビジネスの視点は重要だと思います。私は雇われケアマネですが、母体の法人がビジネスをやってくれているおかげでお給料をもらえるのですから。私が利用者さんと関わるのだってお給料をもらうためです。

しかし看取りというテーマであまりにマーケティングや自己利益の話をするのは、傍目には違和感を感じます。

「延命治療をすると確実に苦しんで亡くなります」と発言するのは妥当なのか?

法人代表のTwitterでは、高齢の方への治療の提供について「末期だとこのまま老衰で苦しまずに静かに亡くなられますが、胃瘻や中心静脈栄養を施すと確実に苦しんで亡くなります」と言える専門職がどれ程いるのか、と発言しています。

確かに私も終末期で自分で食事も水分接種も受け付けず、このまま死に向かっていくように思われる人に対して無理に栄養や水分を補給するとかえって本人の苦痛を増すことがあるという話は聞いたことがあります。

私だってエビデンスの乏しいケアを提供するのは望ましくないと考えています。

ですが「これをすると確実に苦しんで死にます」と発言することは脅しではないでしょうか?

もし専門職であれば、専門的知見から今後の見通し、取れる選択肢とそれについてのメリットデメリットを提示して、利用者さんやご家族に主体的に決めて頂く必要があるでしょう。それが専門性というものです。相手を脅すような言い方をして自分がいいと思うケアを押し付けるのはそれこそ専門職として逸脱しています。

延命治療は全否定はできない

法人の代表は「延命治療で管に繋がれて死にたい人はいるのか?」という主張は一貫して述べており、延命治療を否定することがこの人なりの「ケアの質」の論じ方なのかもしれません。

確かに意識もなく回復の見込みもないのに、胃に食べ物を流され生かされているような状況には違和感を持つ人もいるでしょう。終末期の延命治療のあり方には議論の余地がいくらでもあるはずです。

ただ延命治療を全否定することは誰にもできないことでしょう。

それまで普通に生活していた人が、急に病気になり、胃瘻や経管栄養が無ければ生きていけないとなった時、即決できる人がいるでしょうか?

その人が生きてきた過程や死生観、ご家族の価値観もあります。専門家がするべきことは当事者達の想いに寄り添うことではないでしょうか。ケアを提供する側の価値観を押し付けるなど論外であると思います。

看取りに正解はない

終末期になると状態が急変したり、生死に直結する決断を下さないといけなかったり、ご本人やご家族に大変な負担がかかります。

ご本人にいろいろな想いがあってもなかなか口に出せないこともあるでしょう。ご家族が一度決断を下した後で「本当にこれでよかったのだろうか」と悩むことだって少なくありません。

そんな時にケアを提供する医療職、介護職と信頼関係築けているかが大きなポイントです。納得してどんなケアを受けるか選択出来るか、自分の想いをどれだけ専門職に伝えられるかで後悔の少ない選択ができます。

看取りに正解はないので、何を選んでも後悔することはあります。しかし信頼関係に基づいた上での選択、ケアの提供を受けていれば後悔を減らすことができるのではないでしょうか?

専門職が看取りに対して勉強に取り組むのは重要ですが、相手に寄り添う姿勢を忘れないことはどんな状況でも最優先だと思います。

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