『ハンコ』はなぜ無くならないか?

介護
雪乃
雪乃

いつもありがとうございます。本日は『ハンコ廃止論』について考えてみたいと思います。

進むハンコ廃止…このまま広がる?

最近、無駄な押印を無くそうという議論が盛んです。

私はこれに反対するものではありません。私が日頃関わる仕事に関して言えば、例えば役所に提出する書類は、利用者の押印欄が無くされたものがあります。

他にも、介護申請を代行して行う場合、居宅介護支援事業所が申請を代行する書類として、事業所印の押印が必要でした。これは現在見直され、今後の介護保険申請の代行の際は、押印を省略した書類でよいと見直されています(私が勤める自治体では。市町村が保険者になりますので、多少の地域差はあるかもしれません)。

私はケアマネジャーとして、あらゆるところで利用者さんから押印を頂いています。

ケアマネジャーは月1回は利用者宅を訪問して、介護サービスの利用状況をモニタリングしなければなりません。その際、『訪問確認簿』という書類を用意して、実際に訪問したことを証明する手建てとして、利用者から押印をいただきます(これも地域によります)。

また翌月の介護保険の利用スケジュール、サービスの内容、費用を記載した『利用票』という書類を利用者に渡し、控えに押印を頂いています。

また、サービスの内容を変更する場合はサービス計画書を作り直し、利用者に内容を確認して頂き、同意欄に署名と押印を頂いています。

これを担当する利用者全てに対して行うわけですから、手間と言えば手間です。利用者からの押印がしかるべき場所になければ、市町村から指導が入った時に「本当に書類を利用者に書類を交付して、同意を得ましたか?」と突っ込まれるかもしれません。これは結構なプレッシャーになります。

認知症などで本人から同意を頂けず、やむを得ず家族から同意の署名を頂くこともあります。多忙な家族に面会を申し入れ時間を取ってもらったが、計画書の同意を頂く際に印鑑を持っておられなかった、ということもあります。そんな時に、わざわざ印鑑を押してもらうため家族に再度時間を取ってもらうというのも、とても心苦しいものがあります。一度計画書を持ち帰ってもらって、事業所に郵送してもらうようお願いしたとしても、郵送を忘れられたりすることもありますので、リスクがあります。

ケアマネは扱う書類が多いので、ひとつひとつ押印を必須としていると手間が増えてしまうことがあるでしょう。あるケアマネが必要な印鑑が多いことを嘆いていました。気持ちはわかります。

社内文書での印鑑の取り扱い

ケアマネの仕事としての押印の煩わしさを説明しましたが、押印が必要なのはそれだけではありませんよね。

例えば有給休暇を申請する時や研修報告書を提出する際にも、管理者から、課長から、人事部から、押印をもらわなければなりません。会社員なら同じですよね。

私は立場上、法人の運営に必要な書類を取り扱うことはありませんので詳しくはわかりませんが、要職にある人ほど、裁可、決済を認める押印をしなければならないことが多いのでしょうか。数が多ければ嫌気がさすのも理解はできます。

では『ハンコ』を廃止するべきなのか?

ここまで述べて「じゃあハンコは邪魔くさいから廃止するべきじゃないのか」「ハンコを無くせば手間が減る」と思われる人もいるかもしれません。

私も、必ずしもハンコにこだわる必要はないと考えています。ですが、ハンコを無くすべきかと言われたらそうは思いません。

理由は、ハンコは便利だからです。

ケアマネとして利用者に交付しなければならない利用票は、押印を頂くことでで利用者に交付した証明ができます。もっともこの程度なら「○月✕日、利用者宅を訪問して利用票を渡した」と書いておくことで、別の手段で証明できますから必ずしも押印にこだわらなくてもいいでしょう。

市町村担当者が指導に来ても、記録にそのような記載があれば問題ないでしょう。ですが、ハンコの代わりに記録が必要になるだけで、手間が減るほどでもありません。

ケアプランの交付だって、必ずしも押印が必要なことだとは思いません。同じく記録に「内容に同意を得た」と書けばいいと思います。

このような書類の押印は、形式に拘らず、あくまでも証明の手段の1つと考えればよいだけではないでしょうか。

単に無駄に押印にこだわらないようにするだけで充分な話です。認識を少し改めるだけで、書類の取り扱いは簡素になりますし、今後はどんどんその方向に進むでしょう。

しかし、必ずしもハンコそのものが不要かと言えば、そうは思いません。

利用票、計画書や、社内文書にしても、その書類に押印があることで「その書類の内容に同意を得た」ことが確認できるので、やはりハンコは便利なツールではないでしょうか?

扱う書類が重要であればあるほど、その書類は当事者や要職にある立場からの承認が必要になってきます。

社内で大きな案件の書類なら、関係部署担当者や担当部署長からの承認の確認は必須です。その書類に確認印欄を設け、押印があることで同意の意思を確認できるなら、ハンコは業務効率化を妨げるものではなく、むしろ業務効率化のためのツールと言えるのではないでしょうか?

無論、ハンコにこだわらずそれ以外の方法で同意の意思を確認する手段であれば、そうしたってぜんぜん構わないと思います。柔軟に対応するのはぜんぜん結構。

ですが、ハンコに勝る有用な手段ってなんでしょうか?またハンコそのものを否定する必然性はまったくわかりません。

使えるものはどんどん使えばいい。世の中、「日本はハンコ文化だ」と言い、ハンコが悪いものであると当然の前提として語る人に違和感を感じ、この記事を書きました。皆様のご参考になれば幸いです。


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