『認定調査』②

介護

「介護度って、母の場合はどの程度なんでしょう?」

調査員が帰った後、不安気な顔で娘さんが尋ねてくる。

「そうですね…」

ここは迂闊に答えることができない。私の見立てでは要介護4といったところだが。

「要支援1から、要介護5まで段階はあるのですが…要介護2以上が出る可能性あります。とはいえ、調査結果が出るまでははっきりとは言えないです」

「えっと、つまり…介護サービスは使えそうですか?」

「使えるでしょうね。本来なら認定がおりてからサービスを使った方が安全なのですが…。そこまで待つのが大変、ということもあるでしょうし。最低限の範囲でサービスを使われるのもやむを得ないかと」

そこまで言って娘さんは少し安心したようだ。自分の家庭がありながら、動けない溝端さんのもとに通って介護をするのは大変だろう。

娘さんの希望はデイサービスの利用だ。これまでの話から介護疲れが伺える。無理はして欲しくない。

ただ、最低でも調査が終わるまでは待っても欲しかった。

最悪の場合、申請して調査が終わっていれば、認定がおりるまでに万が一のことがあっても介護認定がされる。仮に亡くなったとしてもだ。

逆に調査が終わるまでにサービスを利用して、調査直前に急変して搬送されたらどうなるか。そのまま亡くなってしまったとしたら。

その場合、調査を受けていないので認定を受けられない。暫定でサービスを利用した分、実費で請求される可能性があるということだ。

そういう懸念は調査を終えたことで少なくなった。調査直前で急に体調が回復して、自立と認定される心配もほぼない。

「教えていただいた柏デイサービス、でしたか。体験利用したいです。本人も納得しているようですし」

「では進めていきましょう」

手短に体験利用の手順を再度説明する。体験の受け入れ可能日はすでに調整済みだ。体験利用は利用費用を頂かない。

3日後の体験利用ということで、話をまとめた。

息子さんはあまり口を開かなかったが。金銭的負担が気がかりだ、とのことだった。そこは無理のない範囲でのサービス利用にしましょう、という提案で同意してもらう。

−−−−

「オーケー、任しといて」

電話越しの小阪主任は機嫌が良さそうだ。

今回のケースはある程度の介護度が見込める。デイサービスも集客したい。

経済力から利用を控える可能性もあり、同居の息子が協力的かどうかはわからないという難しさはある。それを受けてもらえるのだからこちらとしてもありがたい。

お互いの利害が一致したようだな。

「いつも助けてもらってありがとうございます。助かります」

割と本心から口にしたことだった。今回は頼りにさせてもらうとしよう。

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