介護 『認定調査』① 調査の当日、私は溝端さんの家の前にいた。調査員より早めに入り、状況を確認したい。娘さんとの電話では、相変わらず溝端さんは立ち上がったり歩いたりはできないそうだ。 もう少し時間が経たないと、圧迫骨折の痛みはかないだろう。そう思いながら... 2021.02.26 介護小説
介護 『申請代行』 「はい、倉橋です」 昼下がりの事務所にPHSの着信音が鳴る。電話に出たのは管理者の倉橋さんだ。 「はい…ええ、わかりました。誰かそちらに行かせますね」 病院の外来からの電話らしい。倉橋さんはパソコンに向かっていた私に目を... 2021.02.25 介護小説
小説 主任さんは早く帰りたい:『お局の矜持』 階段の踊り場で、私は煙草に火を点けた。 「ライター貸してくんない?忘れちゃった」 いいよ、と私は蔵前沙奈子のタバコに火を灯す。 「あと2週間で卒業公演か〜。早いよね…」 蔵前さんは今度の公演の主役だった。稽古着の黒... 2021.02.21 小説
小説 主任さんは早く帰りたい:『お局』 「先日の患者様満足度調査の結果ですが、外来の評判が悪くて…」 委員会は重苦しい雰囲気から始まった。医療法人の接遇の水準を調査するために、アンケートを取ることになった。結果を取りまとめたのは外来の深川さんだ。 「特に外来診療の評... 2021.02.13 小説
小説 主任さんは早く帰りたい 『接遇力を向上せよ』 医療法人 聖徳会 会議室の扉を開ける。今日は医療法人の接遇委員会だ。顧客満足度の向上のため、定期的に委員会が開催される。委員は2年が任期で、半年前から私に順番が回ってきた。 定刻より早く来すぎたかとも思ったが先客が2人いた。お... 2021.02.11 小説
小説 主任さんは早く帰りたい②:後編 「…お前がやれよ」 しまった、つい言ってしまった。この場にいるのが藤野さんだけなら全然いいんだけど、今は斎藤さんが来ている。 さすがに斎藤さんの前ではまずかったか…。いや、さすがにもう限界だ。ダンボール置きっぱなしで帰ってしま... 2021.02.07 小説
小説 主任さんは早く帰りたい②:中編 「急ぎましょう」 スーパーに車を停めた私達は、急いで飲料品売り場に向かう。松原さんはカートを持って迷わず進んで行く。私も遅れまいと後に続く。 このスーパーは箱買いもできる。冷えた飲料も並んでいるが、いちいちカゴに入れて精算する... 2021.02.06 小説
小説 主任さんは早く帰りたい②:前編 「ああ、もう…」 ハンドルを握る手に、思わず力がこもる。いつもは混む時間じゃないのに、今日に限ってなかなか前に進まない。 「や、大丈夫だよ。このペースなら間に合うって」 助手席から松原水貴が落ち着き払った声で言う。 ... 2021.02.04 小説