主任さんは早く帰りたい

介護

『殴られる介護職』

認定調査員は介護の手間を公平に判断し、できる限りわかりやすく情報を保険者に伝えるのが仕事だ。 判断に迷うことはあるが、迷ったら迷ったと保険者に伝える。どういう状況が発生していて、なぜ迷ったか。それを正確に伝えさえすれば、どういう判断...
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『職員への暴力』

「では、詳しくお聞かせ願いましょうか」 「ええ…」 私と九条さん、2人だけになった相談室で私達は話始める。娘さんへの聞き取りは終わったがまだ帰るわけにはいかない。腑に落ちない点が多すぎる。 「念のため最初の項目から確認し...
介護

『不穏な調査』

「本日は介護保険の更新ということで調査をさせていただきますね。お忙しいところ申し訳ありませんが…」 「そんなもんいらん」 私が話終わる前に五十嵐さんが唐突に口を挟んだ。 「はい?」 「介護なんて俺にはいらん。別に困...
介護

調査委託

現場の介護職と事務の間には、時として対立がある。実にくだらない。 介護をしている職員と事務を担っている職員では立場が違うだけだ。どちらが欠けても組織は回らない。 入浴介助は体力勝負、介護施設なら限られた人数でフロアを見渡し同時...
介護

『看取り⑤』

インターホンを押す前に私は居住まい正す。 6月だというのに雨がほとんど降らず空には雲ひとつない。水嶋さんの家に行くには大きな坂を越えて行かなければならない。 息を整え、額に流れ出る汗をハンカチで拭き取る。吹き抜ける風は気持ち良...
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『看取り④』

滞りなく進む会議というものは、決して司会進行の力量だけでなされるものではない。 参加者が明確な目的を共有する時は、多少進行が拙くともすんなりと進んでいくものだ。 今日のカンファレンスでは水嶋さんの病状、今後の予測と対応、退院し...
介護

『看取り③』

湊記念病院の相談室に通される。そこには相談員の望月さんと看護師、そして水嶋さんの娘さんの姿があった。 今日は水嶋さんの退院前カンファレンスだ。うちの系列の訪問看護ステーション柏の音無主任に車で連れて来てもらった。音無主任と私は軽く頭...
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『看取り②』

湊記念病院の1階のロビーには4人がけの大きなソファーがいくつも置かれていた。そのうちの1つに私は腰掛ける。今日は水嶋さんが入院した翌日だ。 大きな病院だけあって、ひっきりなしに人が訪れていた。だがこのロビーには人影が少ない。 ...
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『看取り①』

私はアドレス帳を開き、いつも頼んでいる介護タクシーの番号を探す。車椅子を持って来てもらっての対応を頼まなければ。 電話をかけるとすぐにつながる。 「お世話になります。ケアステーション柏の松原です。車椅子ですぐに対応して頂きたい...
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『困難事例⑥』

「…と言うわけで、こちらからの支援は終結です。後は特養(特別養護老人ホーム)がうまくやってくれるかと」 「本当になんと言っていいか…。ありがとうございました」 私は地域包括支援センターに報告に訪れていた。 老健へのショー...
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