介護 『暗礁』 「それで母は病院に行くと?」 受話器から聞こえてくる声は穏やかで、それでいて少し戸惑っているようでもある。松原水貴は、反町貴子の娘に電話をかけていた。 反町を説得し、精神科に一度連れて行けば全てが解決するわけではない。受診でい... 2021.05.23 介護小説
介護 『精神科』 反町貴子の支援は難しかった。 水貴が定期訪問で訪れると快く応対してくれる。悪い感情は抱いていないらしい。 だがヘルパーに対しては被害妄想が続いていた。週に1回は事務所の電話が鳴り「ヘルパーがお皿を持って帰った」と、物盗られ妄想... 2021.05.19 介護小説
介護 『精神疾患』 地域の居宅介護支援事業所(ケアマ事務所)、スマイルあおいサポートが閉鎖するという報せが松原水貴のもとに届いたのは、その日の就業時間が終わろうかという頃だった。 きっかけは地域包括支援センターから入った一本の電話だ。 「閉鎖とは... 2021.05.13 介護小説
介護 『メニュー表』 「管理栄養士さんが作ったレシピを拝見しました。これなら滝沢さんも無理なく食べられると思います」 言語聴覚士の安藤の評価に、水貴は安堵する。水貴は訪問看護ステーションに電話をして、滝沢のケースの相談をしていた。 ALSは水貴にと... 2021.05.12 介護小説
介護 『ブリの切り身』 「では、普段食べているものから聞かせてもらっていいでしょうか?」 「魚が好きなので、魚を焼いたりしてもらってます。あんまり手の込んだものを主人に作ってもらうのも悪いし」滝沢さんはマスクをつけたまま言う。 隣で夫が頭をかきながら... 2021.04.25 介護小説
介護 『食事』 「食べたいものを食べさせない、栄養の事ばっかり言うのが介護や医療の仕事か!って思います。私は食べたいものをどうやって食べて頂けるか考えるのが、生活に寄り添う介護の仕事だって思います」 はあ…。 『天下一介護コミュニティ』なる得... 2021.04.24 介護小説
介護 『言語聴覚士と管理栄養士』 「少し声を出してみてください」 言語聴覚士(ST)の安藤さんに声をかけられて、滝沢さんは「あー」と小さな声を出す。 私は滝沢さんのリハビリに立ち会っていた。理学療法士(PT)がリハビリに入る時もある。今日は言語聴覚士による発音... 2021.04.20 介護小説
介護 『胃ろう』 「バイパップ(人工呼吸器)の設定はこれでいいでしょう」 遠山医師は機械の設定値を確認し、滝沢さんに話しかける。 私は保健師の岡林さんと往診に同席していた。 遠山先生はクリニックの診察が忙しく、往診を引き受けることは滅多に... 2021.04.17 介護小説
介護 『例外貸与』 「あの、すみません…。マスクを着けてもいいでしょうか?」 息切れを抑えながら滝沢さんが言う。 調査員は私の方に顔を向けたので、私はうなずいた。 「無理なさらず、どうぞマスクを使ってください。ここからは普段の様子をお聞きす... 2021.04.15 介護小説
介護 『ALS』 ALS −筋萎縮性側索硬化症 この病気は運動を司る神経が弱っていく難病だ。患者は徐々に筋肉が衰え、立ったり歩いたり、日常生活が困難になっていく。 食べること、飲み込むことだって難しくなる。呼吸する筋肉さえも弱っていくので、人工... 2021.04.14 介護小説