危ない地域に住んではいけない?

社会
雪乃
雪乃

いつもありがとうございます。まだまだ水害に対して警戒が怠れませんが、水害、災害について気になったコメントがあったので書いていきたいと思います。

「災害が起きる場所には住まないように」という発言

元大阪府知事、大阪市長である橋下徹氏が、テレビでのコメントで「災害が起きる場所には住まないように」という趣旨の発言をしたとタイムラインに流れてきました。

災害が起きてから逃げるのではなく、そもそも住む場所を変えていかないといけないという事を述べたそうです。

豪雨によって人命が失われ、家屋や財産を失った人が困っている真っ最中に、このような発言をしたことに、彼の人間性に疑問を感じずにはいられません。

まるで災害にあった人は、そこに住んでいたから悪いと言っているかのようです。

確かに人命がいちばん大事なので、住宅地の指定をどうするかなど、考えていかなければならないこともあるでしょう。

しかし、昔からそこに住んでいる人など、住む場所は簡単に離れられないでしょう。危ないから離れろなどと簡単に言っていいものではないと思います。

そして、彼は大阪で首長をやっていたり、東京で仕事をしていたり、都市部のインフラの恩恵をたっぷりと享受してきた人間です。

都市部の防災対策だって、まだ完璧とは言えません。ですが、地方の方よりは整っています。

東京でも大阪でも、地下に大放水路を建設しています。都市を流れる一級河川が氾濫しないように長い時間をかけて対策が行われてきた。

利根川のように、江戸時代から川の流れを変える工事が行われてきたものもあります。大阪の淀川だって、現在流れている淀川は、人工的に作られた第2淀川です。

これらの対策がなければ、関東平野も大阪も、昔からの水害頻発地域です。これまでにたくさんの治水事業が行われているからこそ、発展することができたし、人が安心して住めるのです。

では治水がまだじゅうぶんでない地域は、住まないようにするしかないのでしょうか。もしこれまでに治水が行われて安穏と暮らしている人が、「危ないところには住まないように」と言うのは、あまりに理不尽だと思います。自分が住んでいるところの安全は、もともと安全だったわけではなく、自分1人の力で安全にしたわけではないのに。

安心して暮らせるための努力を怠ってはいけない

そもそも日本という国は、プレートの問題からどうしても大きな地震に見舞われ安い国です。夏になれば台風だってきます。台風でなくても洪水が起きています。

日本列島には中央に大きな山脈があり、降った雨が極めて短時間のうちに海に流れ込みます。なだらかな地形の欧州などとは事情が違います。

日本はそこそこ面積の広い国ではありますが(日本を狭い国という人がいますが、どうしてそう思うのか疑問)山が多くて、可住地は限られている。人が住める地域にも、河川の氾濫が起きればすぐに水が押し寄せてきます。

この国に生きていくには、治水、防災をしっかりしておくことが不可欠です。東京だって、上流のダム、遊水地、河川堤防、地下放水路などがありますが、高潮のリスクにはまだじゅうぶんな備えができているとは言い難いです。台風と満潮が重なれば、数十兆円規模の被害が起きる可能性だって、否定できないのです。

今回の大雨で被害が大きかった球磨川は、ダムに頼らない治水を目指してダム建設を凍結していたそうです。いちおう熊本県の治水対策協議会の資料を読んでみましたが、ダムの代わりにいくつかの事業が提案されていました。しかし、どれをするにしても時間がかかり、治水の効果はダムに比べて低かったようです。

公共事業は計画から実施までに時間がかかるものです。日本は地権者が細分化され手たくさんいるので、計画の段階で地権者一人一人としっかり交渉しなければならない。

ダムを否定して、代わりに川幅を広くして…とか遊水地を作って…とかやっていたら、時間がかかるのも無理はないでしょう。

ダム以外の選択肢を模索するのも悪いとは言えませんが、ダム無しで必要な対策が間に合うのか、しっかりできるのか、考える必要があったのかもしれません。

そして対策ができていなければ、本当に悲惨なことになります。日本は長いこと、公共事業費を削ってきました。最近になって増えたとか言われますが、ほとんど増えていません。こうしている間にも橋やトンネルの老朽化は進んでいますし、今後50年以内に南海トラフ地震と首都直下地震が両方起きる可能性は75%にもなります。早く公共事業を増やしていかないと、対策が間に合わないでしょう。

先日は伊勢谷友介氏から「ダム作りなんて日本はまだやっている」という発言がありました。それに呼応して「ダムを作るなんて時代遅れだ」という意見もTwitterで見かけました。

毎年のように豪雨の被害が起きているというのに、水害の規模もどんどん大きくなっているのに、時代遅れはどっちなんだろうと思いました。

避難計画の作成や、ハザードマップなど、ソフト面で必要な準備をしつつ、治水事業は全国的にも必要な箇所に速やかに実施していかなければならないでしょう。その時には、地方のこともしっかり考える必要があると思います。

災害が起きる地域を安易に見捨てるのではなく、まんべんなく、人が住んでいる地域には何らかの策を講じて欲しいものです。危ないところに住んではいけないと言うのなら、日本に何が起きても安全な場所なんてありません。今安全な地域だって、昔は危なかったのですから。

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