【読書感想】藤井聡氏の著作に感じた違和感

※藤井聡氏の、言論に関する感想

ジャレド・ダイアモンドが『文明崩壊』の中で、イースター島における文明の凋落を解説しました。いわく、限られた面積の中で島民は森林資源を消費し文明を発展させたが、森林資源が枯渇してしまい急速に文明は崩壊してしまった。

森林資源の持続には条件があり、緯度が低く太陽からエネルギーが少なく、かつ火山灰などから土壌の栄養が得られないと、土地がやせ細り文明が持続困難となる条件が揃ってしまう。それがジャレドの論旨だと私は理解しました。それがあってイースター島民は外敵の侵入に抗うことができず、あっさりと征服を許してしまう。

しかし藤井聡氏は『正直者はなぜ得をするのか』の中でイースター島民はお互いに協力をしなかったが故に、あっさりと征服されてしまったとジャレドの著作を引き合いに論じます。

これには少し違和感を感じます。確かに外敵に対して協力をして対抗するべきという主張はもっともです。
ですが、引用元のジャレドの論旨とは大きく異なっており、イースター島における地理的不利に主眼をおいた考察をジャレドはしていたはずです。

それでもやはり「外敵に対して協力し合うのはもっともなことで〜」という主張もあり得るかと思います。

しかし、イースター島という限られた地域の中でお互いに協力がなかったのは外敵の驚異にさらされる前のことであり、外敵が出現する前に部族間での争いがあったのは致し方ない…と言えば語弊がありますが、ある種の必然性があると思います。

また、森林資源の枯渇はゆっくりと顕在化したものであり、イースター島における集団同士の争いがあったとしても地理的条件に恵まれていればもう少し違った未来があったであろうことは、ジャレドの著作を読めば想像できようかと思います。

藤井氏は、イースター島における集団同士の協力の大切さを説きたかったのであれば、ジャレドの本を紹介するべきではなかったでしょう。またジャレドの本とは異なる切り口として、イースター島の歴史を独自の視点で語るものと前置きして書くならば、まあ理解はできる。

あの著作における藤井氏の論調には、多少の違和感を覚えたという感想です。

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