2013年、スウェーデンのウメオ大学がある研究の結果を発表しました。
それは毎日の通勤時間が45分を超えると、離婚率が上昇する。
というものです。
通勤時間に1時間、2時間とかけている人はざらにいるような気がしますが、なぜこのような結果が導きだされたのでしょうか?
研究者はこう分析しています。
- 長距離通勤はパートナーや子供と接触する時間を減らす
- 子供がいる場合、長距離通勤をしていない片方のパートナーに家事や育児の負担が偏り、関係が悪くなる
- パートナーや子供が寂しがることにどんどん罪悪感が溜まっていく
など様々な要因が考えられるそうです。
通勤に付き物なのが満員電車。道路も通勤時間はよく渋滞します。
勤め人の宿命とも言える通勤は時間を奪い、ストレスがかかり、さらに離婚率が高くなるとなるとたまりませんね。
ストレスという害
長距離通勤が離婚率を上昇させる要因としてストレスが無視できません。
通勤時間に見合った額が稼げなければ当然ストレスの原因になりますし、満員電車、電車の遅れ、ラッシュ時の渋滞に巻き込まれればさらにストレスがかかります。
こうしたストレスが夫婦関係にも悪影響を及ぼすと考えられます。
人間の我慢の総量は決まっている
脳科学者の中野信子氏は『悪の脳科学』という本の中で
『人間の我慢の総量はあらかじめ決まっている』
と指摘しています。
人間には「我慢の総量」があらかじめ決められていて、満員電車による通勤などでそのキャパシティを使ってしまっている場合は、ほんの少しのストレスが加えられるだけで、満杯のコップに水を1滴垂らしただけで溢れるように忍耐の防波堤が決壊してしまう。長時間の通勤を経た後の人間は、ストレスへの耐性が確実に弱まっているというのである。
中野 信子著 『悪の脳科学』より
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中野信子氏はウメオ大学の研究結果を引き合いに出しながら、こうした人間の特性で離婚が増えるのではないかと分析しています。
ただでさえ長距離通勤でもう片方のパートナーには家事育児の負担がたまりやすい。
その不満を長距離通勤で疲れ切ったパートナーにぶつけてしまうと、どうなるでしょうか?
ただでさえ疲れ切っているところに不満をぶつけられたら、些細なことで激昂してしまうかもしれませんね。
また離婚以外にもイギリスで行われた調査では、30分以上の通勤をしている人はそうでない人よりも3倍うつになる可能性が高くなると指摘しています。
私の感覚では30分の通勤はザラにあると思うのですが、通勤時間が少し長くなるだけでこれだけの悪影響があるということです。
また2004年のイギリスの調査では『通勤ラッシュによるストレスは臨戦状態の航空機パイロット以上』 と指摘しています。
いわく、戦闘機パイロットは目の前のストレスに自分で対処することができるが、ラッシュ時の混雑電車の中では自由に身動きを取ることもできず、極度のストレスにさらされるのだとか。
これを踏まえて考えると、通勤時間の長さだけではなく、通勤時の環境も重要な要素だと言えるでしょうね。
『我慢』は人間から余裕を奪う
以上のように慢性的に我慢を強いられていると、ストレスからうつや心身症などの健康リスクだけではなく、人間関係の破綻も招いてしまうとわかります。
普段は余裕を持って流せるようなことでも何かに我慢をしていると人間は極端にストレスが弱くなります。
他にも経済学者のジョセフ・スティグリッツは金銭的な余裕のない人は、いかに日々の生活費を抑えるかということばかりを考えてしまって、大事なことをよく考える能力が低下すると指摘しています。
貧しさも常に私たちに降りかかるストレスの源ですから、これも無視できないです。精神的な豊かさはお金に余裕があってこそ、です。でもこれを自覚できない人もいますけどね。
想像して欲しい。1Kのアパートで若いカップルが一つのカップヌードルを分けあって「美味しいね」と頷きあっている風景と冷えきった熟年カップルが無言で高級フレンチを食べている風景を。明らかに前者の方がリッチである。
我慢をすることは人からあらゆる余裕を奪うので、『お金がなくても幸せなカップル』が幸せに関係を続けられる可能性は低いと思いますよ。
まとめに収録されているツイート主の発言は、個人的な価値観を押し付けているだけ。どう考えたってお金はないよりあった方が幸せですし、お金がなくても幸せなカップルにお金があったらもっと幸せに決まっています。
お金がなかったら心がすさむものと思った方がいいです。カップヌードルをわけあっているカップルは微笑ましいかもしれませんが、お金がないと相手に対する余裕がなくなります。
私個人の経験で言っても、以前は不安定な非正規職についていてその時は心に余裕がなくてすぐに怒っていました。
コンビニの店員の些細なミスでつい声を荒げてしまったりしていたものですが、正社員になってお金に余裕ができてからは、コンビニ店員のミスくらい軽く流せるようになっています。
それでも「お金がなくても幸せ」を言う人はお金があれば避けられる不幸がこの世にたくさんあることを知ってほしいですね。
余談:通勤地獄も貧困カップルもお金で解決できる
本筋と少し離れますが、日本の通勤ラッシュは都市圏で特に酷いと思います。地方にも混雑電車はありますが、首都一極集中が続いている日本では首都圏の混雑ぶりはひどいです。
というか、先進国の中で首都圏への人口集中が続いているのは日本くらいのものです。
欧米他国も首都圏に人は多いですが、他の都市も伸びているので首都圏ばかりに人口が集中したりしません。
他国は道路や鉄道などで地方都市の利便性を良くしているので、地方でも比較的住みやすくビジネスがしやすいですね。
比べて日本はというと公共事業を地方都市に広げようとすると「無駄ではないのか」とすぐに言われてしまい、なかなか交通網の整備が進みません。
そうなるとビジネスの中心がなんでも東京になってしまうので、ますます東京に人が集まり、首都圏が住み心地の悪い空間になってしまうのです。
ある程度、地方への公共投資を認めてやるのも心の余裕だと思いますけどね。
国が積極的に地方にお金を回せば、お金に余裕のないカップルも減ります。
私なんかは交通網に投資して通勤時間を短縮してくれるなら大歓迎だと思っています。
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