令和5年8月8日放送のNHK番組、ハートネットTV
原発事故の後、甲状腺がんと診断された患者らのシンポジウムや、患者のその後を取材したとのこと。
しかし、甲状腺がんのことを考えるにあたって重要なことがある。
福島原発事故による健康被害は、おおよそあるとは考えられない。人々の健康に被害があるほどの濃度の放射性物質の量は、人々の周りに存在しない。
だのに、不安から、福島では多くの人に甲状腺の超音波検査を行った。
検査をするだけならいいではないかと考える人もいるかもしれない。だが、そうではない。
超音波検査で深く調べれば、何も症状を及ぼさず、今後放置していても生涯にわたってなんら症状を及ぼすこともない甲状腺がんを発見してしまう可能性が高い。これが過剰診断と言われるものである。
放置してもなんの影響もないがんを発見することは患者にとって不利益である。
がん患者として生きなければならない。大きくならないかと心配して生きる。自分は結婚できるのだろうかと悩む。子供を産めるのか、就職してやっていけるのか…
見つけてしまえば経過を観察する。そして大きくなっていれば切除などの手術を受ける。そして甲状腺ホルモンを薬で補ったりなどの治療を受け続けなければいけなくなる。それでもなお、大きくなった甲状腺がんが、本当にそのまま大きくなり続けるようなものだったのか、医学的には判断が難しいものなのだ。
ハートネットはついぞ、甲状腺がんの過剰診断問題に触れなかった。
甲状腺がんと診断されてしまったために「放射線が出ている」という無知から来る偏見に晒された患者の声が紹介された。
しかし、それならば甲状腺がんの「診断」は放射線被曝による影響とは考えられないとされていることを、伝えても良かったのではないだろうか。
出演したフォトジャーナリストの安田菜津紀氏が言う。「福島の復興に水を差すなと言われてしまって、悩みを表に出せない」
しかし、個人の恐れや悩みは表に出しても良いけれども、それは原発事故によるものとは考えられないと科学的に解釈できることもまた、重要な事実として提示はされるべきだ。
情報を受け取った各々が考えていくべき問題。
「診断」されてしまった多数の甲状腺がんが原発事故によるものだとは言わなかった。だが、そうであるかのように誘導したい意図は透けて見えたと思う。
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