英語教育は遅くからでも大丈夫!語学に関する4つの誤解

・小学生のうちから授業に英語を取り入れよう

・これからはグローバル化の時代だから、英語に力を入れるのは当たり前

・英語の読み書きしかできない日本の英語教育はダメ。会話ができるように義務教育で取り組むべき。

こんな意見をよく聞きませんか?実のところ英語や語学教育はどうすれば役にたつのでしょうか?英語は早いうちからネイティブに学ぶべき?

実は語学についての誤解がかなりあります。今日はそんな誤解の一つ一つについて解説します。

誤解1・英語はネイティブから学習した方がいい

英語のネイティブスピーカーだからといって、英語を教える技術に長けているという保証はありません。あなたが日本語のネイティブスピーカーだとして、あなたはどれほど日本語の文法のルールを理解していて相手に伝えることができるでしょうか?

英語話者も英語の文法ルールを理解して相手に伝えるためには相当の訓練が必要です。

また日本人が英語を学ぶ時の指導者は英語を学んだ日本人が望ましいです。なぜなら指導者が英語を学ぶ過程で得た経験や知識を日本語を使って学習者に伝達することができるからです。

誤解2・英語は英語のみの授業で学習するべき

英語は英語のみの授業で学習するのが望ましいというのも誤解です。

ちなみに日本の文部科学省はこの誤解に基づいた施策を積極的に推進しようとしています。

まずは高校から英語のみの授業を導入し、次は中学校に対象を拡大しようとしています。

ですがこれには根拠がなく、言語学の専門家はこの考えには根拠がないと主張しています。

学習者は思考の土台に母語があり、日本人なら日本語の思考に英語の言語や概念を紐づけて学習するのがもっとも効率がよいとしている。

これは言語学の大家のロバート・フィリプソンが『単一言語主義の誤謬』と呼んでいるものです。

日本人が外国語を学習するときの土台は日本語による思考です。

日本語での論理的思考力や抽象的思考力がついている方がより多言語が学習しやすいですね。

これはアメリカの教育で移民の子供たちに英語を学習させるにはどうすればよいのか議論になった時に、「移民の母語をできるだけ使わないようにさせるべきだ!」という主張が広まったのですが、現在ではこの考え方は支持されていません。

最近のエルネスト・マカロによる言語学習の実証研究では、学習者の母語を使った方が学習の効率がよかったという結果が出ています。

実験は学習者を11,12歳の年少者と18歳以上の年長者に分けて効果を検証したものですが、どちらのグループでも母語を使った方が学習効果が高かった。

ちなみに年少者の方が母語を使った学習の効果がより高かったそうです。

尤も教育の効果は長期的な追跡が難しいので、簡単に結論が出るものでもないんですけどね。

誤解3・英語は早くから学習を始めた方がいい

この稿のタイトルにもありますがこれも誤解です。

英語教育の導入が小学生からとどんどん低年齢化していっていますが、早くから英語を始めた方がよく身に付くという根拠は乏しいです。

確かに発音や聞き取りは幼少期の方がよく吸収できるのですが、早くから英語学習を始めた層と、遅くから英語学習を始めた層では最終的な語学力は大きな差はありません。

早くから英語を始めた方が最終的な語学力は高くなります。

しかし、遅くから英語学習を始めた層は論理的な思考力が身に付いてから語学学習を行えるため、効率のよい学習ができます。

スイスとスペインで行われた言語教育の研究では、小学校から英語学習を始めたグループと、中学校から英語学習を始めたグループの比較が行われました。

この研究では中学校から英語教育を始めたグループの英語力がすぐに追いついています。やはり母語での思考力を活用して外国語学習をした方が効率がよいということです。

また極端な例を言えば40代、50代から英語の勉強を本格的に始めるのだって決して遅くはありません。中年、壮年は記憶力や思考の柔軟性は若年層に劣る傾向にありますが、言語を用いた論理的思考力を含む『結晶知能』は60代くらいまで成長を続けます。

壮年は判断力、経験知、応用力について若年層について圧倒します。

語彙を増やす、英語長文を読解する、文法を学習する、スピーキング力や作文力を身に付ける力は壮年層の方が優れている傾向にあるため、若年層より効率の良い学習が可能なのです。

ただし、子供のうちから家庭の事情で外国での生活をしなければならないような場合、早急に英語教育を始めなければならないでしょう。これはケースバイケースです。

誤解4・義務教育で積極的に英会話力を身に付けるべき

高校教育は義務教育ではありませんが、日本人の英会話力が低いからと大学入試が英語のスピーキング能力を重視した内容に改訂されようとしています。

早くから英会話力を磨くと日本人はグローバルな分野で活躍できるようになるのでしょうか?

すでに学校教育の中で英会話力を重視した教育が施されていますが、海外の大学を見ると英会話力の学習はマイナスの効果を及ぼしているようです。

海外の大学に留学している大学生の中で最近台頭しているのは中国人留学生で、日本人留学生は以前より学力が低下したと評価されているようです。

理由は中国人留学生の方が論理的思考力や学問的専門知識に優れているからです。彼らは主に英文を読解する作業を通じて思考力や知識とともに英語を扱う技術にも長けていっているからです。

英語を扱う能力は英文読解で存分に身に付けることができます。

その素地があれば会話能力も自然と身に付きます。

今起きているのは、目先の英語表現力を重視した教育を施されることによって本質的な英語構文能力を欠いた日本人学生の増加です。

英語を使って複雑な専門的知識を駆使できるようになる学生が増えてこそ日本人の国際的な地位が向上すると思いますが、目先の会話力重視の英語教育はそういう人材を育てられませんね。



まとめ

英語教育は、英語教材業者の煽り文句で溢れた世界だと私は思っています。

言語教育の専門家がいろいろな検証を行ってもなかなか世の中に伝わりません。

英語を社内公用語に使用しようという企業もありますがよく考えているのかなというのが正直な感想です。

英語教育をとにかく早く始めた方がいいとか、英会話力を身につけなければいけないと安易に考えているのなら、ちょっと立ち止まって考えた方がいいかもしれませんね。

英語コンプレックスがあまりに強い人には何を言っても届かないでしょうけどね。

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