自己啓発本やビジネス本にあまり意味がない理由

書店に行くと自己啓発本やビジネス本のコーナーは必ずと言っていいほどありますよね。

最近ではキングコングの西野氏が本を出版していたり、ホリエモンとかテレビによく出ていた人の本も平積みされたりしています。

ビジネスマンとして働いていたら誰しも成功はしたいもの。収入を上げたいけど、どうすればいいかわからないという人だっているでしょう。ビジネス系の書籍はそれなりの需要があるから書店にいつでも置いてあるわけですね。

よく似たタイトルの書籍が多い


しかし書店に並んでいるこれらの書籍は全てではないにしても「できない人が実行力を上げる方法」とか「自分に自信をつける方法」とか同じようなものが多くないでしょうか?

私は10代の後半から20代にかけてビジネス系の書籍を何冊も読みましたが、私が読んでいた当時もタイトルも内容も似たような内容が多かったです。

こういった同じ内容の本が並んでいるということは、成功する方法や法則を書籍でいくら学習しても、実際に実行できなかったり身に付かなかったりする人が多いからだと思います。

厄介なことに、実際にビジネスで成功した人が出版する本は内容が誇張されていることもあります。全ての本ではありませんが、自己顕示欲が強くて自分の体験談を過度に一般化して説明していたり、そもそも話を盛っているので、成功者の体験を読んでもほとんどの人は役に立ちません。

それでも成功者の体験談から学びたいという人もいるでしょうし、憧れのあの人から学びたいという動機で買う人もいるでしょうから一概に全否定はしませんが、いったいどこまで読者に利益が得られるかは疑わしいと言えるでしょう。

過去の記事でも紹介しましたが、人は自分の能力を無駄に高く見積もる傾向があります。「自分はできる」と思っても思った以上にできないことが多い。ましてや成功者は並外れた能力を持っているから成功者として持て囃されているので、その次元まではたどり着けない人がほとんどのはずです。

あまり自分の理想を高く持ち過ぎないことです。

成功者の語る成功法則もあてにならない

購読しているあるメールマガジンから、ある自治会連合会長さんの活動について紹介したメールが送られてきました。

その自治会長さんは、京都市内のある地域で、市バスの路線維持のための活動を10年以上も続けておられるとのことです。

文化的な構造物が多くてなかなか地下鉄を整備できない京都市は、市バスが移動手段の要です。利用者が少ないとバスの路線が削減され、移動困難者が増えてしまいます。

そこで自治会長さんが取った行動は、京都市に「バスの路線を削減するな」と陳情に行くのではなく、バス路線の沿線住民に「もっとバスを使ってでかけよう」と声をかけるものでした。

この活動を10年以上続けた甲斐があり、バスの利用者は年々増え続けているそうです。バスが多く維持されることで、住民も不便な思いをすることもなく、バスも黒字運営ができているとのこと。

こうした成功事例が法則化できない


京都市内の住民運動が上手く行ったのなら、この成功事例を法則化して他の地域でも実行に移していけば他の地域でも成功事例が生み出せるのでは、と思いますがそううまくはいかないようです。

メールマガジンを執筆した川端裕一郎氏はこう分析します。

ところで、こういう地域住民を束ねるような活動の実例を聞くたびにいつも思うのですが、「成功のためのノウハウ」というものがあるようでありません。インタビューする側は、たとえば「成功要因」を聞き出して、それをよその地域にも転用することができるのではないかと考えるのですが、聞けば聞くほど「この人がいたから成功した」としか思えなくなってくるんですよね(笑)

地域のリーダーのどこが優れているのかを、一応記述することはできます。強い当事者意識と責任感、周囲から好かれる人柄、職業人生を通じて培った実務能力、PTAや自治会の活動を長く続ける中で築き上げてきた信頼感、そして何より地域に対する愛情、等々。しかしそうやって要素に分解して語ってみても、どうもその人物の「凄み」のようなものが捉えられません。

出典:表現者クライテリオンメールマガジン 4月25日号


成功事例には、運動の核として活躍している人の「人物の力」に依存するところが大きく、成功事例をいくら活用しても力のあるキーパーソンがいないと同じような成功事例とならないのです。

成功事例を書籍化して出版したとしても、文章で表現できる範囲に限りがあります。しかし、その文章がどこまでキーパーソンに備わっている力を紹介できるかと言えば、難しいと言わざるを得ないのですね。

会社組織のプロジェクトでも同じことが言える

エルセーヌのエステ体験行ってみた!【画像あり】

ビジネスの現場でも、有名企業が実現したプロジェクトの成功事例にあやかりたいと思うのは当然の発想です。

しかし、会社組織やビジネス現場でも、上記の住民運動のような構図が発生します。

ある会社が新しいシステムを開発しようとした時、プロジェクトの中核となった人物は「あの人がやりたいと言っているのだから協力しよう」とか「あの人とだったら一緒にやってもいい」と周囲からの協力を集めました。結果的にプロジェクトは成功しましたが、その人物の持っている魅力やスキルを言語化して共有することは大変難しい。

もちろん、一般的な組織論として共有できるノウハウもあります。そのノウハウを使って結果を出すこともできるが、共有しやすいノウハウと共有しにくいノウハウがあるということです。

書店で手に入る書籍から得られるノウハウは、あくまでも共有しやすいノウハウを集めただけのもの。しかも筆者のバイアスがかかっているので、ビジネス本はいくら大量に読んだところで思ったような結果が出ないのがオチになるのです。無論、まったくの無意味とまでは言いませんが。

有名ビジネススクールの授業でも、得られる成果は限定的

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海外のビジネススクールの講師を務めたこともあるコンサルタントの書籍では、海外の有名ビジネススクールでは海外の企業で高収入ポストに就くための必須の過程ではあるが、そこで得られるビジネスの法則や分析の知識は、あくまでも一般的なものでしかないと評価しています。

ビジネススクールでは人脈を作れたり、多様な意見を生徒同士で共有したり得るものは大変多いが、いくら事例を学んだところで実践力は付かず、実務に必要な知識と経験はそれだけでは身に付かないと弱点を指摘しています。

海外の高名なコンサルタントは、マネジメントの成功は創造性や感覚的に得た経験、そして理論がそろった時に生まれると指摘します。

ビジネス本、ビジネススクールで得られる知識はあくまで理論に偏ったもので、理論だけの学習では効果が乏しい。

上記の書籍の執筆者である遠藤氏は、自身がスクールの講師を務めた時は生徒を積極的に現場に連れていき、現場の空気を学ばせたそうです。現場の人間が何を考えているのか、現場での課題はどのように解決されているのか、教室内では不足する学習を現場で行っていたわけですね。

安易な答えを求めず仕事を一生懸命頑張ること


月並みな意見ではありますが、ビジネス本での勉強も大事ですが、仕事で成果を出すなら目の前の仕事を一生懸命取り組むのが一番の近道ではないでしょうか?

真摯に仕事に取り組んでいたら、あなたの仕事を評価してくれる人が現れ、後になって協力者として後押ししてくれるかもしれません。

また、学習意欲があるなら本を読んで勉強するなら自分の業界に関する知識を得られる本を選ぶこと。まずは入門書からでかまいません。

本当に優れたビジネスマネジャーを育成するのだって、10年単位の実務経験を要するとのことです。ビジネスマネジャーが目標でなくても、ビジネスマンが自分の業界の知識に精通し、実践経験の経験値を積むこと、有益な人間関係を構築するには同じかそれ以上の期間を要するはずです。

何か1つの分野を掘り下げて年単位で勉強すれば他の人にはない武器を持てるので、それだけでも十分有益なはずです。

自分の専門分野だけでなくても、公共政策論や文化人類学の本を何冊か読んでいたことも、今の私にとっては武器の1つとなっています。

千里の道も一歩から、でじっくり学習に取り組むことは決してマイナスにはならないはずです。

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教養を付ける読書がしたいなら、適菜収氏の書籍がおすすめです。古典からどのように知識を習得するのか、生き方をどう考えるのか、参考になる一冊です。

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教養として、経済や社会について簡単に知識を得たい人にはお勧めの本です。お金とは何か、を驚くほどわかりやすく解説した本です。ビジネスですぐに役立つ本ではありませんが、お金と社会への理解を深めることで自然と社会について深く考えることができるようになります。

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