待遇を上げたら、介護の質も上がるでしょうか?

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介護施設での虐待がニュースになっていました。

介護は多くの方が直面する問題ですし、介護サービスを利用するのであれば質の高いサービスを受けたいと思うのが当たり前ですよね。

虐待はあってはならない。虐待まで行かなくても不親切な対応をするような業者には介護を任せたくない。利用者サイドからしたら当然の感覚です。

じゃあ、介護職としたらその希望にどこまで応えられるものかな、と。

冒頭に引用したツイートのように、待遇が上がらなかったとしても感じよくすることはできる。確かにそうかもしれませんね。

実際の介護は排泄介助や入浴介助の技術だったり医療福祉の知識が必要だったり、介護の質の高さとはまさに専門性の高さであると思います。

質の高さを要求するのであればそれなりの待遇を用意してくれよと私だったら思います。

もちろん介護業界の中で努力することで収入を上げていくことはできます。

介護福祉士やケアマネジャーの資格を取れば手当てがもらえることもありますし、管理職になれば収入は上がるでしょう。定期昇給もあります。

でも介護全体のことを考えるとやはり待遇改善が質の向上のために必要ではないかと思います。あいさつ程度のことであれば心がけでなんとかなりそうな気もしますけど。

待遇の改善が必要だと考える理由

人には『我慢の容量』があります。

人によって容量の大きさが違いますが、この容量はストレスがかかるとどんどん減っていきます。休息をとるまで回復しません。

我慢の容量を圧迫する要因として仕事のストレスがあります。利用者さんとも人と人との関係なので、接していれば容量がゴリゴリ減っていきます。対人スキルの高さで減り方は違いますが、それでも苦手なタイプの利用者さんがいれば消耗は激しくなります。

ただでさえ認知症の介護は大変なのに「やり方が悪いのではないか」とか外野に言われたら余計ストレスがたまりますね。

どこでも職場の人間関係でストレスを抱えます。上司から理不尽な指導をされたり、管理職は管理職で部下の指導に頭を悩ませたり、介護以外のどんな仕事でも共通ですね。

他にも家庭の事情とか通勤のストレスとか我慢の容量を削っていく原因はいろいろあります。

そして我慢の容量が少なくなると、利用者さんへの対応に割ける量も必然的に少なくなるということです。

認知症の方の中には、時に同じことを何度も聞いてくる方もいます。

デイサービスを利用していて、午前中は機嫌よく過ごしていても午後になると「私をちゃんと家まで送ってくれる?」と聞いてくる利用者さんの対応をしたことがあります。

「ちゃんと送りますよ」と答えていても、1分もしないうちに同じ質問をしてくる方でした。一日に何十回も同じやり取りを繰り返していて、機嫌の悪い時はさらに質問の口調がきつくなったり・・

皆が皆そうではないですけど、認知症の方の介護ではそういうやり取りもザラだということです。ほんの数分で豹変するタガメさんのツイートのような方もおられますし。

それでも利用者さんに強く注意すれば問題が解決するようなものではありません。介護職が怒ってしまえば、さらに機嫌が悪くなってしまってデイサービスでは受け入れられなくなってしまいます。

そういう介護の一つ一つに対応するために、介護職の我慢の容量や、心の余裕を保つために必要な要素の一つが「お金」だと思います。

お金の少なさは我慢の容量を削ります

人は手持ちのお金が少なくなるとパフォーマンスが低下します。

人は我慢の量にも思考の量にも限界があります。

お金がないストレスはそれだけで負担ですし「今月どうやって乗り切ろうか」ということを考えるだけでそれだけで頭の中が圧迫されます。考えられる量は「認知資源」「認知リソース」と言い換えることもできます。

やりがいだけでは食べていけないので、最低限お金にはある程度余裕を持たせてもらわなければなりません。

勉強する余裕だってお金がなければ捻出できませんし。リフレッシュするにもお金が必要です。

そういう意味で冒頭のツイートについて考えると「確かに、待遇が上がらなかったとしてもプロとして挨拶くらいはちゃんとするべきだけど、やっぱり挨拶の質だけでも待遇は関係するんじゃないか?」と思います。介護の質の本質は介護職の専門性ですけれども。

特に利用者さんから暴言を吐かれても耐えるには我慢の量が特に重要です。

個人の努力で解決しようとしても最低限の収入がなければ難しいですし、中には副業で解決しようとする人もいるかもしれませんが、それだって体力や精神的余裕を削りますよね?

掛け持ちのバイトを昔やっていましたが、今は難しいです。20代だからできたことだと思います。

ネットを使ってアフィリエイトを奨める人がいますが個人的には論外かなと。やるのであれば相当努力して収益化できるまで長期間かかることを覚悟してやらないと稼げません。

お金に頼らずサービスの質を上げる努力は企業、個人ともに必要だと思いますが、全体的な待遇の底上げを今後も考えていってほしいものです。それは企業や個人の努力だけではなくって社会全体で介護の費用を負担する必要があるということです。

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介護の待遇は「介護報酬」で決まります

介護職員の待遇が国からの補助金であると解説している人がいるようですが正しくは介護報酬です。

基本的に40歳以上の人は介護保険に加入することになっています。毎月保険料を払い続けて、介護が必要になった場合は加入者が払った介護保険料と国や自治体の公費から介護報酬が事業所に支払われます。

介護保険に加入している人が要介護や要支援の認定を受けて訪問介護や通所介護、訪問看護のサービスを受けるのは介護保険の「現物支給」です。所得に応じてサービスに必要な費用の1割から3割を負担します。

サービスを提供する側が報酬として受け取るのは「補助金」ではなくて「介護報酬」です。

この介護報酬の額が上がらなければ介護事業での収益が増えないことになります。介護報酬は国が設定しているので、国が介護報酬を上げてくれないと介護職の収入も増えません。

介護報酬が上がるということは介護保険料や公費からの支払いが増えるということにつながりますので、国民の理解を得られないと難しいという結論になります。介護職だって納税者ですし、介護保険に加入していますが。

「これ以上税金や保険料を取られたくない」という人だっているかもしれませんし「介護の仕事にそんなに高額の報酬を支払う必要があるだろうか」という人もいるかもしれません。

でも介護サービスにちゃんと報酬を支払わないと介護事業の運営はどこの法人もできなくなりますし、国民が自分の介護や身内の介護を受ける時に困りますよね?

これまで介護の費用負担をどうするのかの議論は散々されてきましたし、これからも続きます。待遇を改善するために処遇改善加算や特定処遇改善加算という報酬が新設されてきました。でもまだまだ離職率は高いですし、待遇の改善が必要であると考えています。

当の介護職当事者から「企業努力でなんとかするべき」とか、利用者側から「国は無駄遣いをやめて介護や保育の待遇を改善するべき」というずれた意見が出ているので本日の記事を書きました。

全体の問題としても考えるべきことを、個別の問題として考えるべきではないと思います。個別の努力でなんとかなる問題もありますが、努力だけでは解決が難しいことも多分にあると思いますので。あと「無駄をなくして介護に回すべき」論は何が無駄か定義するのが難しいという点で不毛だと思います。

少なくとも介護に関わる人が真面目に考えないと問題解決は難しいと思いますし、質の改善に関して言えば、報酬改善無くして質の改善は限界があると現時点では認識しています。

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