コロナウイルスによる新型肺炎に関しては、今のところ治療法が確立しているわけではなく、軽症の方に関しては検査をする意味が乏しいと何度か言及しました。入院が必要なほどの重症例では検査の対象になってくるかと思いますが、検査したからといって有効な治療ができるわけではありません。
Twitterで「検査は必要ないなんて言っている医者がいますが信じられない。医者なら正しく診断するべきではないんじゃないですか?中には診断なんて別に必要ないという医者もいて目を疑います。患者軽視です」 という意見を目にしました。
なるほど治療のためには診断が必要だというのは一見もっとものように見えます。
ですが、その考えは本当に正しいのかについて、医師ではない私が自分の経験を踏まえて考えてみました。
検査でインフルエンザ陰性・・でも抗インフルエンザ薬が処方される場合もあります
インフルエンザは感染症の代表的な病気です。
発熱などの症状が出てしばらくたってから検査をするとすぐに判定結果がでます。
しかしこの検査だって100%の精度でインフルエンザを検出することができるわけではありません。
インフルエンザに感染しているのにインフルエンザ陰性と判定されてしまう「偽陰性」があり得ます。
しかし自覚症状や医師の診察、また周囲に感染者がいるなどインフルエンザが強く疑われる場合は、医師がインフルエンザと診断し抗インフルエンザ薬を処方することがあります。
日を改めて検査をやり直してそこで陽性になってから処方することもできなくなりますが、抗インフルエンザ薬は発症してから時間が経ってから服用しても効果が落ちてしまいます。
医療機関は検査結果だけで判断しているのではなくて、いろいろな状況から総合して患者に対応しているということですね。
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個人的体験:マイコプラズマ肺炎が疑われる状況で治療してもらった時
マイコプラズマ肺炎は肺炎の一種です。肺炎と言っても症状があまり強いわけではなく、発症しても普通に歩けるくらいに倦怠感も感じなかったりします。肺炎の10%~20%はこのマイコプラズマ肺炎であると言われています。
症状が軽いと言っても肺炎は肺炎です。熱がおさまってもその後長く咳が続く場合が多いです。
私も風邪の症状が始まって、微熱が長く続き受診して薬を飲んでいてもなかなか完治せず10日ほど夜間に激しい咳が止まらなかったことがありました。
再度受診してもらった時に医師から「咳が長く続いているからマイコプラズマ肺炎かもしれないね。検査をして調べる方法もあるけど時間がかかるから、マイコプラズマに効果がある薬を出しておきます」と言って薬を処方してくれました。(マイコプラズマの検査は最近では迅速検査ができるようになりました。ですが10%の確率で偽陰性も生じるとのことです。)
本当にマイコプラズマだったかどうかは定かではありませんでしたが、マイコプラズマに効果のある マクロライド系 の抗生物質をしばらく飲み続けることで時間はかかりましたが完治することができました。
このように検査結果や検査をすること自体にこだわらない治療は、医療において行われていることです。
今回の肺炎騒ぎで「検査をしてくれない」と憤っていた人が結局マイコプラズマだったという話もあるようですね。
検査でマイコプラズマだとわかったのなら、マクロライド系抗生物質の投与でよくなるのではないかなと思います。
検査は参考程度じゃないかな・・追求するべきは患者の利益
検査に意味はない、とか診断に意味はない、とまで言われるとそれはどうかなと思います。
そもそも冒頭で紹介したツイート主のような発言が本当にあったのか定かではありませんが。
ですが検査結果などはあくまで参考程度にとらえて医療を施すというのはある意味理にかなっているんじゃないかと思います。
私を診察してくれた先生は、必ずしもマイコプラズマの検査を行わなくとも、処方した方が良いと判断して薬を出してくれました。
検査をするかどうかは治療を行う上での参考程度。もちろん検査をしなければ治療が保険適用にならなかったり、患者に不利益を与えることもあるでしょう。そういう場合は医師も検査をちゃんと勧めるはずです。
しかし、検査が必ずしも利益があるかどうかはっきりしない場合、医師の念頭にあるのはどの方法を取るのが患者の利益になるだろうか?ということではないでしょうか?
検査は必ずしも万能ではありませんし、医師や患者が検査にこだわって患者に不利益を与えてしまっては本末転倒ではないか・・と思いました。
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