メンタルの不調の代表的な『適応障害』の特長と治療について解説します。
仕事をして職場の人間関係が変わった、結婚して生活の環境が変わった、等々でストレスがかかると不安感や心身に様々な症状が出てきます。通常、ストレスの発生から3カ月程度で表れてくるこの症状は適応障害によるものかもしれません。
代表的な症状
・心の症状
・不安感、憂鬱感
・不眠、イライラなど
・身体の症状
・倦怠感
・疲労感
・吐き気
・動悸
・下痢、便秘など
身体的な症状は自律神経の不調からくるものが多く、ストレスがなくなると6カ月以内に消失することが多いです。
原因
適応障害はストレスが原因で発症します。よくある原因はお金、人間関係、体の病気です。離婚や家族関係のトラブルでも起こりますし、いくつかの原因によって発症する場合もあります。
青年期によくある発症原因は学校の問題、親子関係のトラブル、親の離婚などです。
また、厚生労働省が作成した資料によると精神障害による労災を年代別に分析すると
・20代 23%
・30代 26%
・40代 31%
・50代 16%
職場での精神障害の労災の全てが適応障害ではありませんが、30代以下の精神障害は、全体の50%弱となっています。相当数のパワハラ、モラハラ、セクハラによる適応障害が含まれているものと思われます。
・企業の相談窓口に寄せられる相談の3割はパワハラ
厚生労働省の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討報告書」を参照すると、企業の相談窓口に寄せられる相談でもっとも多いのはパワハラです。
どこからがハラスメントになるのか線引きが難しいですが、パワハラで若手社員がメンタル不調を患うと企業にとっては損失です。
企業のマネジメントの在り方が問われます。
適応障害の治療
・危機介入
面接を通して患者の気持ちを聞き、行動などをそのまま肯定し、必要な医療や福祉につなげます。あくまでも危機的な状況に対して行われる短期的な治療です。
・精神療法
精神療法の技法の1つである集団療法では、同じストレスによる患者同士で悩みを共有します。
個人精神療法は原因となるストレスについてじっくり考える機会を持ちます。
問題についてじっくり考え、視点が変わると早期に解決するきっかけをつかむことができます。
・薬物療法
適応障害について薬物を使用する治療はあまり研究されていません。しかし、短期間に特定の症状に対して薬物を使用することがあります。
・不安が強い 抗不安薬・・ワイパックス(ロラゼパム)、デパス(エチゾラム)
・抑うつが強い 抗うつ薬・・パキシル、ルボックスなど
※抗うつ薬は鬱状態が長引きそうな場合や背景に不安障害がある場合などに使われます。
・不眠が強い 睡眠薬
などの薬物が使われます。
問題を解決するにはストレスの原因を取り除くこと
適応障害はストレスが原因であることがはっきりしているので、ストレスを取り除くことが問題の解決になります。でも、そんな簡単に原因を取り除けないですよね。
では、適応障害を予防したり早期に解決するにはどうすればいいのでしょうか?
『共同体』が人にいい影響を与える
心理学者で第一次世界大戦時に軍医として従軍したアドラーは、戦争の恐怖になやむ人たちを観察してあることに気づきます。
それは他者との関係や仲間意識を育んでいる人は、戦争恐怖症になりにくくなっても回復が早いということです。
この結果はベトナム戦争でも認められました。
他者との関わり、アドラーの言葉で言えば『共同体感覚』を強く持っている人ほど適応障害などの精神的不調に耐性があるということになります。
しかし世の中には他者との関係を築くことが苦手な人もいるのが事実。
それでも、認知行動療法などを受けることによって認知の歪みに気づいたり社会の中に自分の居場所を見つけることができる可能性があります。
適応障害になりかけた時は、適切な相談相手を見つけて、悩みを打ち明けることが助けになります。周囲に相談できる相手が見つからない場合は産業医や精神科医に助けを求めることは何も悪いことではありません。
適応障害を発症するかどうかは、適応能力がその人にあるかどうかがカギなのですが、人それぞれの適応力にはもともと大きな差はありません。
誰かに助けを求める力も、適応障害を乗り越えるための大事な力なのです。
もし精神的に参ってしまっても、誰かの助けを借りて乗り越えればいい。
1人で抱え込む必要はないのだ、と覚えておいてください。
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