『看取り士』の支援は必要なのか?

介護

皆さんこんばんは、雪乃です。

Twitterで『看取り士』という耳慣れない言葉が流れてきました。終末期の患者にケアを行い、その人が亡くなるまで対応することを看取りといいます。

ケアマネジャーとして仕事をしていると、在宅での看取りに接する機会があります。

ガン末期で余命は限られているけれど、最期は住み慣れた自宅で過ごしたいと希望する方もおられます。そういう場合は、その方が介護保険の認定を受けていれば、ケアマネとして在宅での看取りを支援していくことになります。

在宅での看取りは簡単なことではない

当然のことですが、自宅で最期を迎えるというのは簡単なことではありません。家族がいれば、家族の事情にもよるでしょうが、本人に付き添い、何かあった時の対応を行うことも可能です。ですが家族がいないと、ヘルパーや訪問看護師もずっと付き添っていることもできないですから、本人が不安を感じる可能性もあります。

急に苦しみを感じ出した時に、訪問看護ステーションや往診医に連絡を入れることのできる家族がいるかどうかは重要です。介護力が十分でなければ、本人が在宅での最期を希望しても、難しいです。

逆に言えば、家族が動くことが出来れば、ケアマネとして訪問看護や福祉用具などのサービスを調整すれば、本人の希望をできる限り尊重して対応することもできると言えます。

往診医や訪問看護ステーション、ケアマネはそうしたケースでもできる限り利用者や家族の意向を尊重しようと考えているものです。もちろん看取りでなくても本人達の意向を尊重するというスタンスには変わりはないのですが、いずれにせよ支援者の意向を押し付けたりはしません。

難しさもありながら、最善の努力をしようと支援者は常に考えます。

『看取り士』の記事に感じた違和感

すでにそうした専門職が介護保険、医療保険の公的制度に組み込まれているため、利用者は保険の給付を受けながらサービスを利用することができます。もちろん保険でなんでもできるわけではないですし、至らない点もあるでしょう。

看取り士は公的な専門職が対応できない部分のサービスを提供してくれて、利用者にとってはメリットがあるのかもしれません。

しかし、ある記事で看取り士の時給が4000円であると書かれていました。その記事でたまたまそうだっただけかもしれませんが、看取り士は単なる民間資格でしかないので、看取り士が何かサービスを提供しても保険が効かないのです。つまり利用者の全額自己負担です。

それでも利用者が納得して看取り士に実費で報酬を支払うのであれば口を挟む余地はありませんが、公的なサービスが整備されている上にさらに看取り士が保険外のサービスを提供する必要性が、そこまであるのでしょうか?

そもそも『看取り士』とは?

看取り士とは、あくまでも民間資格でしかありませんが、看取り期における専門的知識を有し、看取り期における患者や家族をサポートする人達だそうです。

しかし、そうした役割はケアマネや訪問看護、往診医などの公的資格を持つ専門職も担っています。

看取り士がいるから、よい看取りができるのだという意見がSNS上でありました。しかし、それはケアマネなどの既存の支援者も看取りをサポートしていることをわかった上で言っているのでしょうか?ネットでの紹介され方によって、看取り士こそが看取りをサポートできる唯一の存在であるかのような誤解が発生するのではないかと危惧します。

看取りはあくまでも本人のものである

看取り士が介入した事例のエピソードの記事を読んでいると、さらに違和感のある部分が目につきます。

看取り士の立ち会いのもと、本人の最期の瞬間に家族らも立ち会うことによって、本人のエネルギーが家族に受け渡されるとか、命のバトンが受け継がれるとか、家族が死を受け入れることによって本人が救われるとか、そういう主観的で情緒的な表現が多用されています。

私は、そのように解釈すること自体に問題があるとは思いません。

しかし、そうした表現が使われた記事ばかり目につくと、「看取り士を広めたい人達は、個人の価値観に基づく個人的な満足感を得たいだけではないのか」とか「個人の死生観を人に押し付けている」ように感じます。

看取りという出来事を支援者が主観たっぷ語ったり、その主観をふんだんに散りばめたPR記事のようなものが量産されることに嫌悪感抱かずにいられません。

看取りとは亡くなったご本人にとってもものではないのか?と思いますし、病院で亡くなった方をどこか軽んじているように思ってしまいます。

人の最期を語るには、もっと慎重になるべきではないでしょうか。


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コメント

  1. […] 雪乃 (@blance_neige7) September 16, 2021 『看取り士』の支援は必要なのか?皆さんこんばんは、雪乃です。Twitterで… Share on Facebook Share Share on TwitterTweet Share on Pinterest Share […]

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