介護職と専門性

介護

どんな仕事でも専門性というものがあると思います。

専門性には専門分野の知識と、技術、実際に職について身に付ける実践知があります。

コンビニのバイトだって商品の陳列にはマニュアルがあり、接客や品出し業務はやれと言ってすぐに高度に実践できるものではありません。

高度な専門性を有するか、そうでないか、また専門性のうち知識と技能のどちらが優先されるか等は職によって様々なだけ。単発のバイトなどのごく一部を除いて、仕事には専門性があります。

介護に専門性があるのかどうかの話がツイッター上であったので、本日は介護職はどのような専門性があるのか述べます。

介護士の専門性1:対人スキル、コミュニケーション能力

職場内で挨拶をする、組織内で人間関係を築き円滑に仕事を進める、報告、連絡、相談をする、等は多くの職場で共通の必須技能なのでここでは除きます。

介護士に特有の専門技能としては、高齢者の特徴を理解して要介護者と円滑にコミュニケーションをとる技術であると言えるでしょう。これは座学のみで身に付けるのは困難な実践知の一つです。

私はコミュニケーションの基本は「相手の想いを聞く」「相手の気持ちを理解する」ことであると思っていますので、介護士の聞く技術次第で相手に安心感を与えたり、意思決定に必要な想いを聞き出すことができます。

施設で働く介護士であれば、住み慣れた家を離れ新しい環境に戸惑っている利用者と接することが多いかもしれません。デイサービス、デイケアに来る利用者は普段は閉じこもりでサービスを利用する時だけ社会参加ができる人だったりするかもしれません。

高齢者の心理はその人を取り巻く環境や人生経験により様々ですが、話を聞いて受け止めてもらえて嫌な思いをする人は少ないでしょう。

少なくとも相手に不快感を与えない聞き方は介護士に必須のスキルだと思います。

次に伝え方。理解力や記憶力の低下した高齢者にかみ砕いてわかりやすく物事を伝えたり、それでいて相手の想いを尊重した伝え方ができるか、時に強い言い方でも大事なことを伝えられるか、は重要です。

例えば利用者がある日強い腰痛を訴えていた、受診が必要だと思われるがなかなか納得してもらえない、といったケースはよくあります。

伝え方次第で解決できるかと言えば必ずしもそうではありませんが、適切な言葉を使いながらかみ砕いて受診の必要性を説明するのは経験がなければできません。まずどうして病院に行きたくないのか、気持ちをしっかりと受け止めた上で再度説明すれば受け入れてもらえる場合もあります。

どうしても受診を受け入れてもらえないならどういうリスクがあるのかも説明しなければなりません。状況判断や将来予測を踏まえながら相手とコミュニケーションを図るのはまさに実践で得た経験がなければ不可能です。

コミュニケーションを図るうえで必要な要素は観察力も含まれます。

状況によって相手は言いたいことを言えていないのではないかとか、認知症の人が不穏になっているが理由は何が考えられるかとか、状況、相手の表情、心理を観察すれば見えてくるものが多い。これも過去のパターンとあてはめたり自分自身の経験で得た知識であったりを駆使して経験のある介護士とそうでない介護士では差がついてきます。基本的なコミュニケーション技能の知識の学習、具体的なコミュニケーション技術、経験で得た判断の応用、3つの要素を活用することで専門性が発揮されます。

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介護士の専門性2:介助技術


基本的な介助技術は、ベッドから車椅子に移乗させる、相手の着替えを手伝う、オムツを交換する、等あげればキリがありません。

知識面で必要なのものは座学でも学習します。ボディメカニクスという介助方法の基本知識が必要になります。間違った方法で介助すれば相手にケガをさせてしまったり、介護士自身がケガをしてしまう原因にもなりかねません。

移乗をする際のボディメカニクスを例に挙げると
・相手を立たせる際、まずは相手の体と自分の体をなるべく近付ける。
・相手を持ち上げる際、介助者は足を開いてなるべく支持面積を大きくする。
・体幹、上肢の筋肉だけでなく大腿部などの大きな筋肉を活用する。

などがああります。

具体的な介助の方法は動画で観た方がわかりやすいですね。

介護技術#04 全介助でのベッドから車いすへの移乗について【介助方法】【日本福祉アカデミー】

以前、家族での介護をされているお宅にお邪魔した時に家族がベッドからの起き上がりを手伝うのに苦労されているシーンに出くわしました。

実際にその時に介助のポイントをお伝えし実際にやってみたのですが、効率の悪いやり方とポイントを押さえたやり方とでは使う力が全然違います。

介護士はあらゆる介助シーンで専門技能が求められます。当然の如く専門技能を持っていることこそ、専門性です。

介護士の専門性3:医療福祉、制度などの知識


知識面での専門性は主に研修での座学や資格試験勉強、自己学習で身に付きます。制度の知識などは、その制度が具体的にどのように運用されているかなどが介護職種としての経験の中で身に付きますので、実践知も重要な要素です。

医療面で実際に診断を下したり、薬を処方するのは医師にしかできません。また医療的な処置は看護師などでないと行えない物が多く、介護士が医療に踏み込める範囲は制限されています。

そういう意味で介護士に求められる専門性は医療職より高くはないと言えますが、高くはないだけでちゃんと専門性は求められています。

寝たきりの高齢者によくあるのが、寝返りが自力でできずに同じ姿勢を長時間とることによって発生する床ずれです。

床ずれがどういう条件で発生しやすくなるか、介護士がきちんと判断できなければ施設の介護も在宅の介護もなりたちません。

栄養が不足している、オムツの交換の頻度が少なく湿った状態になっている、摩擦の多い介助をしてしまっている、等のケースで床ずれが発生しやすくなります。高齢になれば疾病が増えるので、病気に関する知識も必須です。

以前ツイキャスで「インフルエンザが流行っているから、うちの施設では使い捨てエプロンをつけて介護をするべきだ!」と主張している人がいました。しかしエプロンの使用は感染予防にコストに見合った効果を発揮しません。無駄なことをしないために衛生学的な知識も必要になります。「インフルエンザは空気感染する」などともツイキャス主は主張していましたが、インフルエンザは飛沫感染が主です。こういうところも押さえておかないといけません。

また介護は基本的に介護保険制度に基づいて提供されるため、介護保険に関する知識が欠かせません。

・介護保険を利用するには要介護認定を受けなければいけないこと。
・所得に応じて負担の割合が違うこと。
・介護保険の給付以外に、市町村が独自に整備したサービスもあること。

など様々な知識を有しておかないと、介護士として活躍できる範囲が狭くなってしまいます。

まとめ:介護士自身が自らの専門性を理解すること


ここで述べたような専門性はあくまでも一例ですが、介護士なら自分の仕事に専門性があるという認識は当然だと思います。介護士以外の人だとわからない場合もあるでしょうが、介護士に専門性はあります。

ただ、一部の介護士の中には「自分の仕事には専門性がない」と思っている人がいるらしく、ツイッターでは少し荒れていたようです。

介護職の専門性について考えてみたが、考えるまでも無かった

このような動画もありましたが、アップ主さんが言われていることに私は全面同意です。

自分に専門性がないと思っている介護士が日頃どんな介護をしているのかが疑問です。

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