個人委託配送サービスの当て逃げは、プラットフォームに責任がないと言えるのか

働き方
雪乃
雪乃

いつもありがとうございます。ウーバーの配達員と思しきバイクが、当て逃げ事件を起こしたという報道がありました。このままだと被害者は泣き寝入りとなりかねないのですが、この件に関して気になる意見がありました。ウーバーのシステムについて思った事を書いてみようと思います。

ウーバーの配達員は個人委託を受けているのだから責任はない?

千葉県の路上で車を運転していた方が、バイクに衝突される事故に遭ったそうです。衝突して来たバイクはその場から去りました。当て逃げ事件です。

バイクの運転手はウーバーのマークのついたカバンを背負っていたそうです。配達中だったのかどうかは運転手が逃げたためわかりません。

ウーバーは「警察の捜査に協力する」とのコメントをしています。

しかしこの件に関してウーバーが責任を取り被害者に保障を行うということはないでしょう。ウーバーはあくまでもシステムを提供し登録者に仕事を振るだけで、あくまでも配達員を雇用しているわけではありません。そもそも配達中だったのかどうかも定かではありませんし。そこまではわかります。

しかしこの件に関して「ウーバーを責める意見があるけど筋違いだ。ウーバーはレストランと配達員をつないでいるだけで、何かあってもそれは配達員個人の責任。ウーバーが悪いというのは報道に惑わされている」という意見があり違和感を感じました。

それは問題の本質を見誤っていると思います。確かにこの件においてウーバーに責任を問うことはできないでしょう。しかしウーバーの配達員が、仮に配達中に事故を起こしたとして、それは配達員個人の責任だというシステムに問題はないのでしょうか。

私はウーバーの配達をしたこともありませんし、サービスを利用したこともありませんので、システムについて正確に理解できているわけではありません。

確かにウーバーは配達員を雇用するわけではなく、登録した人にウーバーが受けた依頼を振るシステムを採用しているようです。アプリに登録してウーバーの配達を引き受ける人は従業員ではなく、あくまでも「パートナー」という立ち位置のようです。配達員はあくまでも個人事業主です。配達員は仕事を引き受けるかどうかは任意ですし、空いた時間を使って仕事ができる便利な副業、あるいは本業を得られるというメリットはあります。

ですがこのシステム自体に、労働に関して発生した責任を負うことや労働者の権利の保護を蔑ろにしているのではないかという、言わば雇用の責任の放棄ではないかという批判意見があることを、擁護意見の主は認識していないのではないかと思います。

個人委託というシステムは雇用の責任放棄ではないか?

確かにレストランが提供する食事が安価な利用料で家庭に運ばれてくるというのは、利用する側としてメリットがあります。仕事を請け負っている配達員だって個人の判断で登録し、仕事を請け負っているのでしょう。

しかし、ウーバーの名前を使って仕事を発生させている以上、配達中の出来事になんら責任を持たない、配達員個人に責任を負わせるというシステムには違和感を感じます。

会社が労働者の権利や安全の保護にコストを払っていないからこそ安価なサービスが提供出来ているのでしょうが、その分配達員が不安定な立場に立たされているという側面があると言えないでしょうか。

本来であればなんらかの雇用契約を結び、配達中の安全配慮や事故に関する責任を負うべきです。でなければ安価なサービスの引き換えに不安定な立場の”個人事業主”を世の中に大量生産するだけに終わってしまいます。

そもそもこれまではウーバーの配達員は被雇用者ではないという立場から、ウーバーは有給休暇の発生などを認めてはいませんでした。

しかしウーバーの配達員は実質的にウーバーに雇用されているのと同義だとしてイギリスの雇用裁判所は2016年10月、ウーバーは配達員に有給休暇を与えるべきとの判決を下しています。(参考:『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』前出のリンクを参照)2017年末にもこの判決を支持する控訴審判決が出ています。

確かにウーバーのサービスは、配達や運送を請け負っている個人に対してもメリットがある程度あることを否定はしません。

しかしこれはあくまでも個人委託の仕事だという主張はだいぶ苦しくなっていると思われます。

またウーバーは仕事を請け負わない登録者に対してペナルティを与えたりと、パートナーと称しているその関係性はウーバーに有利な非対称性のあるものです。このようなビジネスの形態自体に疑問を持つべきではないでしょうか。

「ウーバーの配達員はあくまでもレストランと配達員をつないでいるだけ」というのは、単にウーバーの見解を右から左に流しているに過ぎません。そのシステム自体への疑問を突き詰めて考えるくらいの感覚は必要です。

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