人はすぐには育たない

社会
雪乃
雪乃

昨年はお世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。更新期間が空きましたが、また少しづつでも更新していければと思います。

人はすぐには育たない

コロナの感染が急速に拡大しつつあるようです。年明けから陰鬱な話題ですね。

既にイギリスでは、感染者が増えたことにより救急搬送の患者の受け入れ先がなかなか見つからないといった事態が生じているようです。

本来なら医療を受けて救命することができる、コロナ以外の患者も、コロナで病床が埋まったり医療機関の対応能力が落ちることにより対応できなくなってしまう…このような医療崩壊は、医療サービスを必要とする全ての人にとっての不利益です。1日も早く収束に向かいますよう切に願っています。

さてここで。医療崩壊の危惧を表明すると、中にはこのような疑問を抱く人もいるのではないでしょうか。

医療崩壊って言うけど、コロナ危機は前からさんざん言われていたことでしょ?医療が崩壊の危機なら、なぜもっと早くに医療体制を強化しておかなかったの?

といった疑問です。確かに医療体制を強化するべきではないのかという疑問は至極もっともでありましょう。

しかしここで、スキルを持つ人材を育成したり数を揃えるのはそう容易なことではないという基本を改めて考える必要があります。

コロナの致死率も脅威ですが、重症化した段階で高いレベルの医療を提供しなければなりません。人口呼吸器を使用するには、まずは設備がないことにはお話になりませんが、それを管理するのは人です。

人工呼吸器を使用したとして、患者の呼吸状態、病状に合わせて機器の設定を変更していかなければいけませんし、医療者がその医療機器の扱いに長けていなければならないのは当然の理です。

そのようなスキルを持つ人材を揃えることは容易なことではないでしょう。診療経験の豊富な医師や、勤務経験の豊富な看護師、技師が必要になってきます。それらは一朝一夕の研修などでは育成できるものではない。ある程度の長期スパンで人材を育成していくか、ブランクのある人材になんとか現場に戻って来てもらうようお願いするしかないのではないでしょうか。

それらを踏まえると、医療体制の強化がまだまだ不十分であるとしても、現場の医療機関や政策担当者を責めるのは安直と言わざるを得ないのではないでしょうか?

感染症の標準防護策にしても、その扱いに長け厳しい勤務条件に順応していくには時間がかかります。防護服だって着脱には手順がありますし、扱いを間違えれば汚染を拡げてしまいます。ハイリスクな患者を抱える医療機関において、医療スタッフの感染防御策の熟練度が極めて重要なのは言うまでもありません。

人材育成の難しさは他の分野でも

昨今の日本の経済停滞によって、社会に様々な綻びが生じていることを私はヒシヒシと感じています。

例えば建設業はどうでしょう。

90年代の後半から、公共事業は大きく削減されてしまいました。その結果起きたのが建設業者の廃業です。

建設に必要な重機を扱い、安全管理をし、人命に関わる道路や橋やトンネルを建設する、それに求められる技術と経験はそうそう得られるものではありません。

特筆すべきは、東日本大震災の際、地域の建設事業者は各々の判断で動き、輸送において重要度の高い道路の障害物を撤去し、破損箇所を修復し、その後の救援や支援を円滑に行えるようにした功績です。

日頃から技術を蓄積するのみならず、土地勘を養っていたからこそ可能であった成果と言えるでしょう。公共事業削減の折り、このまま地域の建設業者の廃業が続いていれば、東日本大震災の速やかな支援活動は難しかったのではないかとさえ言われています。

その後の復興においては、建設業者の供給力が不十分なため、復興事業がいたるところで遅延しました。復興に必要なマンパワーを確保するのが容易ではなかったからです。

人の技術とは、あらゆる経験から総合的に時間をかけて身についていくものです。足りないから増やしましょうと思っても、容易にはできない。時間をかけて公共事業を長期的計画的に行っていくしかないわけです。

医療に関しても、人が足りないなら時間をかけて充足させていくしか方法がないという点では同じだと思います。それは難しいとしか言えないので、少なくとも感染症対策を社会的に実施し、感染のスピードを抑えるといった対策が不可欠であると考えています。

大阪では、重症患者が多いので看護師を集めようとしています。そして求めている人材はICUの勤務経験があるなどのハイスキルを持つ看護師なのだそうです。今はハイスキルの看護師を集めたいのはどこの自治体でも同じだと思うのですが、ムシのいい看護師派遣要請を他の自治体はどう受け止めているやら…

医療体制の強化は、必要ではあるが容易ではない。そう思いながら現在の事態を眺めています。できることなら早くに感染拡大が収束しますように…


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