いつもありがとうございます。介護の仕事では、時に利用者さんからの暴力を受けたりすることがあります。そのような時に「適切な介護をしていれば防げたのではないか?」というご意見を目にすることもありますが、実のところどうなのか、と考えてみました。
介護とは嫌がる人にも提供しなければいけないものです
介護を受ける人には、認知症や精神疾患の方も含まれます。
中には意思疎通が難しい程に認知症が進行している方もおられます。そんな方に介護を提供する際、悩ましいのが介護に抵抗される方が一定数いるということです。
オムツの中に失禁されていたら、そのオムツは交換しなければいけません。場合によっては先延ばしにしてもいいかとは思います。でもいつまでもそのままにしておくわけにはいきません。
しかし、中にはオムツ交換に抵抗される方もいらっしゃいます。
これはオムツ交換だけに限った話ではありません。デイから帰ってきたので、迎え入れのヘルパーが車椅子から自宅のベッドに移乗させる際や、着替えをする際、部屋から移動していただく際、あらゆる介護のシーンで介護への抵抗は起こりえます。
この場合の介護の抵抗とは、介護者の手を払いのけたり、引っかいたり、時には介護者を蹴ったり噛みついたりも含みます。
非常に興奮されている方の介護をする場合は、介護者もそれなりの覚悟をして臨まなければいけません。
施設などで重度の認知症の方を介護している介護職は、そのような目に遭う頻度がとても高いでしょう。私は幸いにして現場経験がデイサービスだけだったので、そのような目にあったことは少ししかありません。
デイサービスでは介護者に対して暴力を振るわれるような利用者さんは、なかなか受け入れが難しいからです。家族でも対応が難しくなり、施設入所を検討する場合が多いでしょう。
介護者から利用者に対して暴力が振るわれたら、それは虐待として問題になります。しかし、介護者が暴力を受けた場合は問題になることは少ないように感じます。介護者にも暴力を受けない権利はあると思うのですが、介護者からの暴力ばかりに世間の目が行きがちなように感じて、どこかもどかしい気持ちを抱いてしまいます。
介護者の対応や接し方で、暴力は未然に防げるのか
このように手が出る利用者さんに対して
相手を尊重し、適切な接し方で真面目に介護をすれば、利用者さんも暴れることはない。
というような意見が介護職当事者から表明されることがあります。
しかし、私はこのような意見には違和感を覚えざるを得ません。
私の狭い経験でも、私がケアマネとして担当したケースでも、利用者さんからの暴力が対応ではどうにもならなかったケースが実際にあるからです。
ある認知症の方は感情の起伏が激しく、何もないときは落ち着いているのですが、日によっては興奮が激しく、介護者に対する怒りをぶつけるようなことが多々ありました。
介護者が何もしていないのに、唐突に「この泥棒!!」と叫び、どうしても車椅子から降りて頂かないといけない時に体に触れようとしようものなら、引っかいたり蹴りつけたり、暴力が始まる方がおられました。
何に対して興奮しているかもわかりませんし、声をかけても聞く耳を持たないので、どうにも対処のしようがありません。
適切な介助で~と仰る方は、そのような事例でどうやって対応してくださるのでしょうか?
私には対応次第でどうにかできるようなものであるように思えないので、精々、その方を極力刺激しないようにして落ち着くのを待つか、利用者さんからの暴力を覚悟でなだめながら介助をするかくらいの対応しか思いつきません。
対応方法次第でなんとかなるという発想が、現実離れしているように思えるのです。
ユマニチュードという技法
テレビなどで『ユマニチュード』という介護の技法が紹介されていたことがあります。
介護の仕事をして半月くらいで介護について語っている超大型新人様はこのユマニチュードを熱心に勉強したようですが、不勉強な私はこの技法を体系的に勉強したことがありません。
しかし、聞きかじった知識でこのユマニチュードを説明すると
【ユマニチュードの特徴】
・認知症を理解し、相手と良い関係を結ぶことを重視する
・「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの基本的な動作を駆使し、認知症の方の問題行動を減らしていく
他にもユマニチュードが語っている認知症の理解とかいろいろあるのですが、ざっくり言うと以上がユマニチュードの基本的な考え方となります。
ちゃんと相手と目を合わせて話すとか、相手の言葉を繰り返し優しく声掛けするとか、相手にボディタッチして安心感を与えるとか、それがユマニチュードの技法の根幹だそうですが
いや、それって普通の事じゃね?
と思ってしまいます。
介護現場における利用者さんからの暴力と言うのは、それで解決できないからみんな頭を悩ませている。
もちろん、そういう基本ができていないから認知症の方がより不穏になってしまうという場合だってあるでしょう。
介護現場より医療現場の方がその点が理解されておらず、そういう現場ではユマニチュードの教えが通用するという意見もありました。
しかし、ユマニチュードで語られている技法とは、介護を体系的に学んだ専門職であれば日常的に提供している普通のケアの範疇なのではないかと思います。
より深くユマニチュードを学んでいくと新たな発見があるのかもしれませんが、職場でユマニチュードを勉強したという人の対応方法を見ても、それで問題が解決しているという風にはとても思えません。
私だって、認知症の方と接する時は相手の話を否定せずにそのまま繰り返したりしますし、必要に応じて目を合わせたり、相手の目線を探ったりします。
デイサービスの新人の時から、意識してやっていたつもりです。
無垢な新人の頃から、デイサービスの利用者さんが帰りたそうにしているのを落ち着けようとして笑顔で語りかけたら
うるさい👊!!
( ゚∀゚)・∵. グハッ!!
とお腹にパンチが飛んできたことがありました。
屈強な体を持つ鎧の新人ならダメージも少なかったでしょうが、私はそんな防御力がありません。相手の目をみていた私は、パンチへの反応が遅れてしまいました。
幸いにしてちょっと痛かった程度で済みましたが、Twitterでの介護職の中には痣ができてしまったと痛々しい画像を投稿している方もおられます。
やはり、問題行動のある利用者さんに接する時には、生半可な技法では通用しないのではないかと思います。
少なくともユマニチュードで問題行動の多くを解決できるのであれば、介護現場でもっと普及していてもいいと思いますが、あまりユマニチュードで上手くいったという話は聞きません。
極めれば効果があるのかもしれないですが、簡単に問題を解決できる魔法のような技法は、今のところ存在しないのではないか、というのが現時点での私の結論です。
上手くいった方がおられるのでしたら、ぜひ教えてください。
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