小説

介護

『困難事例①』

「私は、介護のイメージアップに命をかけて取り組みます!それが私のミッションです!命をかけるとは命を削るという意味で…」 男がそこまで喋ったところで私は動画を閉じる。今観ていたのは『介護エターナルカップ』というイベントだ。 この...
介護

『サービス担当者会議③』

エピローグ:藤野ユリ 21日の予定は外せなかった。 その日は娘の高校の三者面談だ。今後の進路を決める大事な面談だ。娘は教師になりたいと、日頃から勉強を頑張っている。今更日にちを変えられないし、必ず行かなければ。 だが、黒...
介護

『サービス担当者会議②』

「では、退院の日にちもそろそろ決めていきたいのですが…」 相談員の梅本さんが切り出す。確かにいつまでも入院しているわけにもいかないし、黒川さん自身が入院という状況に戸惑っている。 息子さんも退院して自宅でと考えているのだし、在...
介護

『サービス担当者会議』

「松原さん、電話。黒川さんて方から」 「黒川さん?」 一瞬戸惑ったがすぐに思い出した。以前に申請を代行した人だ。 黒川さんは一人暮らしの85歳。女性。一人暮らしとはいうものの、同じ町内に息子夫婦が住んでいて、息子さんが毎...
介護

『認定調査』③

「水貴ちゃん、お疲れ」 「お疲れさまです」 柏デイサービスに着くと、すぐに藤野さんが出迎えてくれた。 今日は溝端さんの体験利用の日だ。打ち合わせ通り、お迎えの時は娘さんが送り出してスムーズにいった。 調査が終わって...
介護

『認定調査』②

「介護度って、母の場合はどの程度なんでしょう?」 調査員が帰った後、不安気な顔で娘さんが尋ねてくる。 「そうですね…」 ここは迂闊に答えることができない。私の見立てでは要介護4といったところだが。 「要支援1から、...
介護

『認定調査』①

調査の当日、私は溝端さんの家の前にいた。調査員より早めに入り、状況を確認したい。娘さんとの電話では、相変わらず溝端さんは立ち上がったり歩いたりはできないそうだ。 もう少し時間が経たないと、圧迫骨折の痛みはかないだろう。そう思いながら...
介護

『申請代行』

「はい、倉橋です」 昼下がりの事務所にPHSの着信音が鳴る。電話に出たのは管理者の倉橋さんだ。 「はい…ええ、わかりました。誰かそちらに行かせますね」 病院の外来からの電話らしい。倉橋さんはパソコンに向かっていた私に目を...
小説

主任さんは早く帰りたい:『お局』

「先日の患者様満足度調査の結果ですが、外来の評判が悪くて…」 委員会は重苦しい雰囲気から始まった。医療法人の接遇の水準を調査するために、アンケートを取ることになった。結果を取りまとめたのは外来の深川さんだ。 「特に外来診療の評...
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主任さんは早く帰りたい 『接遇力を向上せよ』

医療法人 聖徳会 会議室の扉を開ける。今日は医療法人の接遇委員会だ。顧客満足度の向上のため、定期的に委員会が開催される。委員は2年が任期で、半年前から私に順番が回ってきた。 定刻より早く来すぎたかとも思ったが先客が2人いた。お...
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